農家から騎馬警察隊まで!あらゆる人々が訪れる中国式カフェ…よそ者の華人の作った店がいつしか地元の人々の憩いの場へ

AI要約

世界各地に存在する中国人経営の中華料理店について、その背景やカルチャーを紹介。

ノルウェーの小さな町からカナダのプレーリー地域まで、地元の人々に愛される中華料理店の存在。

カフェとしてだけでなく地域の拠点として機能し、様々な客層が訪れる中華料理店。

農家から騎馬警察隊まで!あらゆる人々が訪れる中国式カフェ…よそ者の華人の作った店がいつしか地元の人々の憩いの場へ

 北米中華、キューバ中華、アルゼンチン中華、そして日本の町中華の味は? 北極圏にある人口8万人にも満たないノルウェーの小さな町、アフリカ大陸の東に浮かぶ島国・マダガスカル、インド洋の小国・モーリシャス……。 世界の果てまで行っても、中国人経営の中華料理店はある。彼らはいつ、どのようにして、その地にたどりつき、なぜ、どのような思いで中華料理店を開いたのか? 

一国一城の主や料理人、家族、地元の華人コミュニティの姿を丹念にあぶり出した関卓中(著)・斎藤栄一郎(訳)の

『地球上の中華料理店をめぐる冒険』。食を足がかりに、離散中国人の歴史的背景や状況、アイデンティティへの意識を浮き彫りにする話題作から、内容を抜粋して紹介する。 『地球上の中華料理店をめぐる冒険』連載第7回

 『「人口1200人の荒野の町」で朝の6時から営業するカフェ…無償で働き続ける華人の好々爺が語った「人生の哲学」とは』より続く

 チャイニーズカフェは、単なる飲食の場ではない。カナダのプレーリー地域では、町の憩いの場でもある。地域の拠点であり、家族を育む場でもある。

 ジムと常連客は深い絆で結ばれているとあって、ずいぶん長い間、常連にも店の鍵をわたしてある。朝、ジムより先に店に来てしまっても、自分で店を開けてコーヒーを飲んでもらえるようにとの配慮からだ。何なら、厨房に入って自分で朝食を作ってもいい。ジムがいなくても、客は帰り際にカウンターの木箱にお代を入れて店を出る。

 この店は、老若男女問わず地元の人々に愛されていた。

 早朝にここでコーヒーを飲んでから農場に向かう労働者。朝の仕事を終えてここで一息つくスクールバスの運転手。ランチタイムに連れ立っておしゃべりに興じる母娘。1日に二度来店することもある定年退職組。

 「自宅に帰るには遠過ぎるし、ここは手作りのおいしい料理があるから」と、毎日ここでランチを楽しんでいるのは、王立カナダ騎馬警察隊のリサ・クーパーだ。

 厨房の撮影をクォイに任せている間、私は店内で30代半ばとおぼしき3人の男性客に話を聞いた。ジョンディアのベースボールキャップを被ったジェレミーという男性は、「だらだら過ごし、コーヒーを飲んで、何か食べて、トランプで遊んだり」で、6時間以上過ごした日もあったと振り返る。

 ブルージェイズのベースボールキャップ姿は、ジョン。7歳のときに両親に連れられて来店して以来の常連だ。

 「初めて来た日から中華料理が好きになって、ずっと通っている」

 同じく3人組のカーティスは、席につくなり

 「何をオーダーするかジムにはお見通しなんだよ。『フライドポテトのチーズとグレービーソースがけだろ』ってね」

 『日本の中華とは一味違う? カナダで出会った米国“風”中華は「残り物」から生み出された驚きの料理だった! 』へ続く