「横綱格の失敗事業」有明海の“ギロチン”から27年… 諫早湾干拓事業、失われた“宝の海”漁業者の苦悩【報道特集】

AI要約

有明海で深刻な状況が続くノリ漁師たちの苦境。赤潮による栄養不足や病気の影響で収穫が低迷し、海の未来に不安を感じる。

「イサカン」事業により有明海は変わり、諫早湾が閉め切られてから異変が起こる。過去の豊かな漁獲量とは一変し、海の状況が悪化し始める。

かつて「宝の海」と称された有明海は、諫早湾干拓事業の影響で「死の海」に近づきつつある。漁業者たちは海の回復を望みつつも、厳しい現実と闘っている。

「横綱格の失敗事業」有明海の“ギロチン”から27年… 諫早湾干拓事業、失われた“宝の海”漁業者の苦悩【報道特集】

九州の北西部に位置する有明海。27年前に海の一角を閉め切った公共事業が、この海を変えました。今なお悪化し続ける海の状況と、長きにわたる国との闘い。苦悩する漁業者たちを追いました。

■ノリ漁師「“死の海”に近づいているのではないか」

九州の北西部に位置する内海・有明海。2月から3月にかけて、名物・有明ノリの収穫が最盛期を迎えるが、佐賀県西側の漁場では、ここ数年、深刻な状況が続いている。

佐賀・鹿島市のノリ漁師 中村和也さん

「病気まで一緒に入ってしまって、色落ちと同時に。こんなにノリが伸びないのは初めてですね。30年ぐらいしてきて、こんなノリ初めて」

赤潮の発生により栄養が不足し、なかなかノリが伸びない。色落ちもあり、アカグサレ病という病気も出た。

ノリ漁師 中村和也さん

「不安どころか、もう廃業したいと思いますよね。海が良くなる見込みが全然ないし。もうノリだけじゃない。魚も貝もとれないからですね。『死の海』に近づいているんじゃないかって思っている」

干潮と満潮の差は、最大6メートルにもなる。日本の干潟の約4割を占める広大な干潟に支えられ、有明海は、かつて「宝の海」と呼ばれていた。

宝の海の象徴だった、高級二枚貝「タイラギ」。

元タイラギ漁師 平方宣清さん

「2時間で100キロとかとれました。その当時、キロあたり2000円ぐらいだったでしょうかね。ですから20万円ぐらい」

そこに持ち上がった「国営」諫早湾干拓事業。通称「イサカン」。2530億円をかけ、有明海の一部である諫早湾の奥を「潮受け堤防」で閉め切り、農地を造成するという巨大公共事業だ。

最初は、食糧不足を解消するための「米の増産」が、その主な目的だった。時代は変わり、米余りで減反政策がとられるようになっても、事業計画は中止されなかった。目的を変えながら生き残り、最終的に「防災」と「農地の確保」をその目的として強行される。

1997年には諫早湾の奥が鉄板で閉め切られる。その様子は、ギロチンと呼ばれた。ギロチンが落ちた直後から、有明海に異変が起こる。