転倒による労災防げ!バランスボールで筋力アップ、VRで事故を疑似体験…背景に運動不足や高齢化

AI要約

仕事中に転倒して起きる労働災害事故を防ぐため、自治体や企業の間でユニークな手法や先端技術を取り入れる動きが広がっている。

厚生労働省によると、昨年の死傷者数は3万6000人を超えてこの30年で最も多く、労災全体に占める転倒の割合も最多になった。

市や企業などがフィットネスボールやVR技術などを活用して、職員や従業員の健康と安全を確保する取り組みが進んでいる。

 仕事中に転倒して起きる労働災害事故を防ぐため、自治体や企業の間でユニークな手法や先端技術を取り入れる動きが広がっている。厚生労働省によると、昨年の死傷者数は3万6000人を超えてこの30年で最も多く、労災全体に占める転倒の割合も最多になった。背景には働き手の運動不足に加えて高齢化もあるとみられ、専門家も対策の重要性を指摘する。(原聖悟)

 福岡市役所10階の財政局財産有効活用部。職員が椅子の代わりに座るのは、緑色や水色などの色鮮やかなバランスボールだ。不規則に揺れ動き、背もたれもないため筋力の向上効果が期待され、宮崎真吾課長(47)は「座っていると腰や腹に効く。緊張感もあって逆に集中できる」と実感している。

 市はスポーツジムの運営などを手がける企業2社の協力を得て、運動習慣がない40歳以上の職員100人に5月から約3か月間、バランスボールを体験してもらう実験を続けている。宮崎課長も年を重ねるごとにつまずきやすくなったといい、「内勤でなかなか運動する機会がないのでありがたい」と話す。

 市によると、通勤や勤務中に負傷した市職員のうち、転倒が原因だったのは20~30歳代が16~19%なのに対し、40歳代は25%、50歳代31%、60歳代では50%に達する。40歳を過ぎると増加が顕著になるという。市職員健康課は「筋力の低下が理由とみられ、段差がないところでも起きている」と説明する。実験結果は企業とも共有し、筋力アップや転倒の防止に効果があったかなどを検証する。

 企業にとっても、従業員を事故から守ることは最優先の課題だ。労災防止教育を通じて地域社会の役に立とうという取り組みも始まっている。

 今春、仮想現実(VR)技術を使って転倒や転落といった事故を疑似体験できる施設を導入したのは、宮崎県都城市にある全国有数の焼酎メーカー「霧島酒造」だ。本社敷地内の安全研修センターにあるシミュレーター装置では、35種類の労災事故の危険性を学べる。