岸博幸氏「高齢者の社会保険料」一律支援は限界だ 治療の費用で実感したこと

AI要約

元官僚・慶応義塾大学大学院教授の岸博幸さんが60歳で多発性骨髄腫という難病を宣告され、自らの闘病経験をまとめた自著『余命十年』について語る。

岸さんは治療費について、日本の社会保障制度のありがたさとその限界について述べ、病気との闘いを通じて改めて制度の重要性に気付いた様子。

社会保障制度の維持について、高額薬の保険対象化の難しさや、高所得者への自己負担増加についての岸さんの見解が示されている。

岸博幸氏「高齢者の社会保険料」一律支援は限界だ 治療の費用で実感したこと

60歳で多発性骨髄腫という難病が発覚した元官僚・慶応義塾大学大学院教授の岸博幸さん。主治医から10~15年という“余命宣言”を受けたことで自らの人生を振り返り、やめたこと・始めたことを自著『余命十年』にまとめた。自身の闘病経験を踏まえて、若い人たちに伝えておきたい“遺言”とは――。インタビューを2回にわたってお届けする(前後編の後編)。

前編:60歳で難病「岸博幸さん」残りの人生の“優先順位”

■財政は厳しいのに、手厚すぎて心配

 ――今回の治療では、けっこうなお金がかかったのではないでしょうか。

 かかりましたね。正確な金額は覚えてないけれど。日本の社会保障はしっかりしているんだなって、病気になって改めて実感しました。

 例えば高額療養費制度って、月の負担が一定額を超えたら、その分は社会保険料から補填される。僕の場合は1年間の治療費がトータルで4桁(1000万円)いってたから、それがなかったらたいへんだったと思う。

【写真】病気との向き合い方や、日本の医療制度、今後の生き方について語る岸博幸さん(9枚)

 今も多量の薬を飲んでいるし、注射も打っているから、毎月70万~80万円はかかっている。それが20万円ぐらいですんでいるんだから、本当にいい制度だと思います。

 やっぱり日本の社会保障制度はしっかり整備されていて、メリットが大きい。逆に言えば、メリットが大きすぎて大丈夫かな、とも思うよね。

 高齢化が進んで病院には人がたくさん来るし、高額な治療が増えている。そうじゃなくても日本は財政が厳しいのに、こんなに手厚くて大丈夫なのかって、心配になりますね。

 ――国の政策に関わることがある岸さんとしては、どうすればこの社会保障制度が維持できると思いますか? 

 ここが本当に難しくて……。僕自身がこういう治療をして、制度を利用した経験から言うけど、高額な薬を全部保険の対象にするのは無理があるよね。

 ただ、これに対する明確な“解”ってなくて、少なくとも所得や資産が多い人は自己負担額を増やすしかないんじゃないかなって、思っています。これは年金制度にも共通する問題なんですけれども。