遠藤周作「海と毒薬」の題材「九大生体解剖事件」立ち会った医学生が集めた資料、九州大学医学歴史館に

AI要約

太平洋戦争末期に起きた「九大生体解剖事件」の収集資料が九州大学医学歴史館に寄贈された。事件では米軍捕虜8人が死亡し、執刀医ら23人が有罪判決を受けた。東野利夫さんは事件を調査し著書を出版。

東野さんの資料は公判記録や手紙など約300点で構成され、2021年に寄贈された。石橋達朗学長は一部を常設展示し、教材として活用する予定。

九州大は負の歴史でも事実を記録し、学生や医療関係者に正しい姿勢を示す機会を提供するとコメントした。

 太平洋戦争末期に起きた「九大生体解剖事件」の現場に立ち会った東野利夫さん(2021年に95歳で死去)が収集した資料が、遺族により九州大学医学歴史館(福岡市東区)に寄贈された。同大の石橋達朗学長は一部を常設展示し、授業の教材とする方針を示した。

 事件では米軍捕虜8人が実験手術の末、死亡。遠藤周作の小説「海と毒薬」の題材にもなった。

 執刀医ら23人は絞首刑など有罪判決を受けた(後に減刑)が、医学生だった東野さんは罪に問われなかった。戦後、産婦人科医の傍らで事件を調べ、著書を出版。著書の原稿や元米兵と交わした手紙、米国立公文書館から取り寄せたとみられる公判記録など約300点が4月、寄贈された。

 同大医学部卒の石橋学長は「負の歴史でも事実を記録に残すことが九州大の義務。教材に組み込むとともに常設展示し、学生を含む医療人が襟を正す機会をつくりたい」とコメントした。