地球温暖化は本当に解決できるのか…「天気をコントロールする」という「意外な奥の手」

AI要約

東日本大震災から13年が経ち、能登半島地震を含む数多くの震災が発生している。防災意識の重要性が問われる中、『首都防衛』などの書籍が防災対策について詳細に解説している。

天気予報の歴史と発展、人工降雨装置の存在、気象現象の予測精度の向上など、科学技術の進歩による天災対策の可能性が探られている。気象庁による最新の予測技術や気候変動による影響も取り上げられている。

一方で、台風や豪雨などの自然災害の激甚化が懸念される中、内閣府の取り組みや大阪・関西万博のテーマなど、未来社会に向けた防災・減災の取り組みが必要である。

地球温暖化は本当に解決できるのか…「天気をコントロールする」という「意外な奥の手」

 2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。

 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。

 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。

 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)

 明日の天気が予測できるようになったのは130年ほど前のことだ。今では当たり前のように知ることができる天気予報のなかった時代は、空の色や風向き、生物の様子などから「予測」していた。それがスーパーコンピューターの登場で台風ならば1週間前から3日ほど前に気象庁が注意喚起できる時代を迎えている。では、将来的に人間は天気をコントロールできるようになるのだろうか。

 我が国で最初に発表された天気予報は1884年6月1日。全国の天気を一行で表したもので、交番などに掲示された。気象庁によると、約20年前は人間による分析がコンピューターに勝っていたが、スーパーコンピューターの登場で予測精度は当時と比較にならないほど向上した。

 札幌管区気象台長の室井ちあし氏は「大雨や台風はある程度予測ができる現象のため、危険な時間になる前に安全な場所に移動すれば被害は防ぐことができる。どれだけ多くの人に台風の脅威を伝え、備えてもらえるかで被害の大きさは変わる」と説明する。

 今日では「線状降水帯」の予測も開始されるようになった。線状降水帯は同じ場所で積乱雲が次々と発生し、数時間にわたって大雨をもたらす。豪雨災害を引き起こす要因となる危険な現象だ。気象庁では最も予測が難しい現象の一つといわれてきた。

 「線状」の雨雲が日本列島上空に急に出現したと思ったら、数時間後に消失したり、逆に長くなっていたりと変化するのだ。だが、データ分析や予測精度の進化によって2022年6月からは「半日前」に予測を発表できるようになっている。

 とはいえ、近年は台風の威力増大や記録的豪雨が多発している。気候変動に伴って気温上昇と降水量の増加が見込まれ、風水害の激甚化につながることが懸念されているのだ。

 2014年8月、広島市には1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降り、同時多発的に大規模な土石流が発生。70人以上が犠牲となり、土石流災害としては過去30年間の日本で最多の被害になった。

 2015年9月に関東・東北地方を襲った豪雨は、一部地域で5日間の総雨量が600ミリを超える記録的大雨となった。利根川支流の鬼怒川は堤防が決壊し、死者14人(災害関連死含む)、氾濫面積は約40平方キロで多数の孤立者が発生し、約4300人が救助された。

 2018年7月に襲来した西日本豪雨は「平成最悪の水害」となった。西日本を中心に全国123地点で72時間の積算雨量が観測史上1位を更新し、各地で河川氾濫や土砂災害が発生した。死者220人超、負傷者450人超、住家全壊約6800棟、床上床下浸水は約3万棟などの被害が確認された。気象庁は、個別の豪雨としては初めて「温暖化が一因」との見解を発表している。

 台風や大雨による激甚化を防ぐためには、地球温暖化問題と真剣に向き合わなければならない。だが、それ以外の方法として「天気をコントロールする」という“奥の手”が注目されている。科学技術の発展によって、それを実現しようという試みだ。

 実は、東京都には全国でも珍しい「人工降雨装置」がある。奥多摩町の施設では雲の中に雨粒の種となる物質(ヨウ化銀)を撒き、人工的に降雨を促す装置が導入されている。ヨウ化銀とアセトンの混合液を燃焼・発煙することで上空の雲にヨウ化銀を送る。雲に到達したヨウ化銀は周囲の水蒸気を集めて粒となり、それが落下して雨に変わるという仕組みだ。

 大規模な渇水時のみ稼働することになっており、1996年夏に利根川水系の取水制限率が30%になった際には41日間稼働した。まるで、『ドラえもん』の「ひみつ道具」にあるような人工降雨装置は世界で50ヵ国ほどに導入されているという。ただ、これはあくまでも「雨を降らせる」装置であり、自然災害の被害を軽減することにつながるわけではない。

 それならばと、内閣府は2021年10月に開設された横浜国立大学の台風科学技術研究センターに研究費を投じ、台風を制御する未来を見据える。全国初の台風を専門とする総合研究機関には気象学の専門家や防災、エネルギー科学の研究者らが所属し、産官学の垣根を越えて防災・減災を目指している。

 1970年に開催された大阪万博(日本万国博覧会)のテーマは「人類の進歩と調和」だった。三菱グループの「三菱未来館」は、50年後の日本が科学技術で陸・空・海を支配し、台風や津波といった自然の脅威を人間がコントロールできる様子を描いていた。だが、万博開催から50年以上が経過した今も人間は天災と闘っている。

 2025年には「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに大阪・関西万博が開催されるが、人類共通の課題解決に向けた新たなアイデアは創造されるのだろうか。道なき道はなおも続く。

 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。