G7が案じる中国のEV過剰生産問題 大統領選前に急進的な米国への不安も

AI要約

中国の過剰生産問題に対するG7の懸念、特に電気自動車や太陽光パネル分野での補助金と輸出攻勢に関する批判が明らかにされた。

米欧は中国の過剰生産による市場歪曲を問題視し、関税引き上げの対応策を模索。日本も足並みを揃えつつ、対応を検討している。

日本は中国との経済関係を維持しつつ、報復措置に巻き込まれつつある状況で、日中韓首脳会談に向けて未来志向のメッセージを模索している。

イタリア・ストレーザで25日閉幕する先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、中国の過剰生産問題に対し、各国が懸念を共有した。米欧は中国政府から巨額の補助金を受けた中国企業が電気自動車(EV)や太陽光パネルの輸出攻勢をかけ、市場をゆがめていると批判。日本も米欧と足並みをそろえる。

■労働者票狙いで硬化

「中国の生産能力に関する評価の実施を提案する」。フランスのルメール経済・財務相は24日、中国の過剰生産問題について、G7各国と国際通貨基金(IMF)による調査を求めた。

米欧が問題視するのは、中国が巨額の補助金を特定企業に拠出し、生産能力を過剰に高めている点だ。不動産不況のあおりで中国国内には十分な買い手がおらず、廉価な中国製品の大量流入で米欧の企業は圧迫を受けていると主張する。

バイデン米大統領は11月の大統領選を前に、労働者層に自国産業を守る姿勢をアピールしようと強硬姿勢を強める。5月14日には、トランプ前大統領が導入した中国製EVに対する25%の制裁関税を100%に引き上げると発表した。一方のトランプ氏は中国からの輸入品に一律60%の関税を課すと表明している。

欧州連合(EU)の欧州委員会も中国のEV向け補助金の調査に乗り出しており、近く関税を引き上げる可能性がある。

■対中戦略に温度差

米欧からの批判に対し、中国は「生産能力は過剰ではなく、不足している」と反論。19日に日本や米国、EU、台湾から輸入される樹脂の一部についてダンピング(不当廉売)の疑いで調査を始めたのは対抗措置の可能性がある。

米欧と異なり、日本は中国のEV戦略の影響を直接受けているわけではない。だが、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「日本は半導体以外では中国との経済関係を維持したいが、すでに報復措置に巻き込まれつつある」と指摘する。

27日には日中韓首脳会談が開催され、中国との関係が試される場となる。木内氏は「経済的には未来志向のメッセージが打ち出されるだろう。日本は二枚舌で中国と向き合うしかない」と語る。(米沢文)