「昔ながらのマッチを作る会社には戻れない」 不退転の覚悟でお香「hibi」をヒットさせた3代目

AI要約

神戸マッチは創業以来成長を続けてきたが、需要の急減で赤字に転落し、hibiというマッチ型のお香を開発し大ヒット商品に。

hibiはマッチと一体化したお香で、月産90万箱を販売し、国内外で人気を博している。

マッチの製造から撤退し、hibiを主力製品にする決断を下し、自社生産品の9割を占めるまでになった。

「昔ながらのマッチを作る会社には戻れない」 不退転の覚悟でお香「hibi」をヒットさせた3代目

 兵庫県太子町の神戸マッチは1929年の創業以来、マッチ生産で成長を続けました。しかし、100円ライターなどの普及や健康意識の高まりから、マッチの需要が急減し、2003年には赤字に転落します。3代目の嵯峨山真史さん(55)は培った着火技術を見つめ直し、擦って火をつけるマッチ型のお香「hibi 10MINUTES AROMA」(hibi)を、地元線香メーカーと3年半かけて開発。月産で90万個のヒット商品になりました。その過程で祖業のマッチ製造をやめる決断を下しながらも、技術自体は捨てずにイノベーションを実現しました。

 「もしhibiを生まなければ、すでに倒産していたかもしれません。まさに救世主でした」。嵯峨山さんはそう振り返ります。

 hibiはマッチと同様、先端の頭薬を箱で擦って火をつけ、専用マットに置くと約10分間、香りを楽しめる仕組みです。マッチと一体化したお香で、香りはレモングラス、ラベンダーなど16種類にのぼります。レギュラーサイズ(8本入り、専用マット付き)の価格は770円(税込み)です。

 2015年に発売を始めると、月産90万箱の大ヒット商品になりました。画期的な仕様とデザインが評価され、2019年のグッドデザイン賞でグッドフォーカス賞に輝きました。

 オンラインショップや国内の小売店で販売するほか、30カ国以上に輸出しています。売り先は国内が7割、海外が3割です。

 hibiが自社生産品の9割を占めるまでになりました。その一方、同社は16年、旧来のマッチ棒の製造を終え、機械を売却。マッチの一貫生産に終止符を打ちました。今は国内の他社工場からマッチの供給を受け、社内で印刷したパッケージに詰めて製品化しています。

 「マッチ製造部門は2008年から赤字が深刻になり、古い機械の維持すら限界でした」。嵯峨山さんは頭薬をペースト状に練って混ぜるノウハウを守りつつ、hibiを生み出す工場として再起動しました。「昔ながらのマッチを作る会社には戻れない」という不退転の覚悟でした。