iPhone にも活用「世界でもっとも平坦な製品」を作る日本のものづくり企業

AI要約

日本の技術力が再び世界で注目されている。特に半導体関連の最先端技術で日本企業が重要な役割を果たしている。

SUMCOはシリコンウェーハの製造で世界トップクラスの技術を持ち、TSMCなどの大手ファウンドリーに供給している。

日本のものづくり企業が世界最先端製品の製造に貢献し、技術力を持つ企業が復活を遂げている。

iPhone にも活用「世界でもっとも平坦な製品」を作る日本のものづくり企業

 連載【ものづくり・ニッポンの復活】(1)『夢の「月面生活」を可能にする「世界初の技術」を持つ、ある企業の挑戦』はこちらから

 宇宙開発のような未来の技術だけでなく、現在進行中の技術革新にも日本の技術力が大いに貢献している。

 多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏が言う。

 「今、日本のものづくりが世界に再び認められようとしています。長い停滞の時期を乗り越え、ひたすら技術力を磨いてきた企業が改めて世界で存在感を示している。円安だから日本の製造業の株価が上がっているわけではありません。これまで培った技術力を放棄せずに、新たな市場を開拓した企業がいま復活しているのです」

 その最たるものが世界的な大ブームに沸いている半導体関連業界だ。話題の生成AI(人工知能)をめぐって、「ChatGPT」を開発した米オープンAIや最先端半導体を開発する米エヌビディア、台湾のTSMCが注目を集めるが、彼らの技術を下支えしているのが日本企業なのである。

 「その代表格の一つが、半導体用シリコンウェーハで世界トップクラスのSUMCOではないでしょうか」(真壁氏)

 同社は旧住友金属と三菱マテリアルのシリコンウェーハ事業を統合し、そこにコマツ電子金属が合流してできた会社だ。半導体の基板となるシリコンウェーハを製造する。SUMCO専務取締役AI推進本部長の加藤健夫氏が強みを語る。

 「日常生活の様々なシーンで活躍する家電や電子機器、携帯端末などは現在、シンプルな操作で多くの機能が果たせるようになりました。こうした高機能の実現の裏側では超高速の情報処理が行われており、それを司るのが半導体です。この半導体を作るには多くの部品が必要ですが、その基板となるのが シリコンウェーハであり、弊社はリーディングカンパニーです」

 SUMCOのシリコンウェーハの凄みは、その平坦さと清浄度にあるという。加藤専務が続ける。

 「半導体製造では、基板のシリコンウェーハに微細な加工を施すため、表面が平らでなければいけません。弊社の主力製品である300mmウェーハを例に取りましょう。仮にこれを直径300mの野球場に置き換えると、その高低差は0.1mmあるかどうかというレベルです。世界中のあらゆる物質の中で、最も高い平坦度を誇ると言っても過言ではありません。

 また、ごくわずかでもウェーハの表面に微粒子が付着すると、回路が正常に機能しなくなってしまうので、清浄度も重要です。こちらは、九州がすっぽり入る直径300kmの円に対して、1円玉程度の大きさの微粒子が数個レベルという精度で制御しています」

 SUMCOはファウンドリー(受託製造会社)世界トップのTSMCの重要なサプライヤーとなっている。TSMCはアップルのiPhone用チップセットやエヌビディアのGPUに搭載させる半導体など、最先端の半導体の生産を一手に受託している。

 「つまり、最新のiPhoneや生成AIの多くに弊社のシリコンウェーハが使われていると言うことができるでしょう。完成品のメーカーではないため、なかなか多くの人に知ってもらうことはできませんが、世界最先端の製品を支えている自負はありますし、誇りを持って『技術世界一』をビジョンに進んでいきたい」(加藤専務)

 【ものづくり・ニッポンの復活】(3)『人材不足を解決する「スゴい技術」で日本のものづくりを支える「優良企業」の実名』ヘ続く

 「週刊現代」2024年5月18・25日合併号より