インドで「もっと日本アニメを見たい」、配信参入次々…イベントでは「鬼滅の刃」などコスプレも

AI要約

インドで日本アニメの人気が急上昇しており、企業が動画配信サービスなどに参入している。

コロナ禍による在宅時間の増加を背景に、インドの若者たちの日本アニメへの関心が高まっている。

エンターテインメント市場の拡大が予測される一方で、所得水準の低さが企業にとって課題となっている。

 14億超の人口を抱えるインドで、日本アニメの普及に注力する企業が増えている。映画王国として知られるインドだが、コロナ禍以降、日本アニメへの関心が急上昇したためだ。各社は動画配信サービスなどに参入し、需要の取り込みを図る。(インド西部ムンバイ 井戸田崇志)

 商都ムンバイで4月に開かれたアニメイベントには、「鬼滅の刃」や「ワンピース」のコスプレをした若者らが詰めかけた。

 鬼滅の刃ファンだという大学4年生エシータ・プラジャパティさん(22)は、「登場人物の献身的な姿や感情の強さにわくわくする。もっと多くの日本アニメを見たい」と興奮気味に語った。

 イベントでは、ソニーグループ傘下の米映像配信会社クランチロールが、鬼滅の刃の声優を招いたトークショーを開いた。ムンバイでゲームセンターを運営するバンダイナムコアミューズメントは、「ドラゴンボール」のフィギュアの展示や、ガンダムシリーズのプラモデルの体験ブースを設け、いずれも人だかりができた。

 インドでは1991年の経済自由化以降、「ドラえもん」など子ども向けを中心に、テレビで日本アニメが放送されてきた。コロナ禍で在宅時間が増えたのをきっかけに、インターネット経由で様々な作品が知られるようになり、裾野が広がった。

 クランチロールは2022年に本格的に配信事業を始め、過去半年で会員1人あたりの視聴時間が倍増した。ラウール・プリニ会長は、「登場人物のビジュアルや個性、アクション、交錯するストーリーが若者に人気だ」と話す。日本アニメに特化し、競合する米動画配信大手ネットフリックスやウォルト・ディズニーなどとの差別化を図る。

 23年末には、映像制作会社エイベックス・ピクチャーズや集英社など13社が出資する合弁会社が、米アマゾンのプライムビデオ上で、日本アニメ専用チャンネル「アニメタイムズ」の配信に乗り出した。

 英調査会社EYは、インドのエンターテインメント市場規模が26年に3・1兆ルピー(約5・8兆円)と、23年に比べ3割以上増えると推計する。日本アニメもこの波に乗れば、さらなる需要拡大が期待できる。

 ただインド政府によると、23年度の1人あたり所得は20万ルピー(約37万円)にとどまる。動画配信を楽しむ余裕がある人は限られており、企業にとっては当面の収益確保が課題となる。