日本人と欧米人は「腸の中」まで違っていた!ゲノム解析によって判明した「人種」と「腸内細菌」の関係

AI要約

脳と腸が情報をやり取りし、全身の調子に影響を与える「脳腸相関」のメカニズムについて解説。

腸内環境の乱れがさまざまな病気や不調に関連しており、腸内マイクロバイオームの分析が進化の道しるべとなる。

ヒトの腸内マイクロバイオータは4つの主要な細菌門から成り立っており、人種によって微妙に異なる構成がある。

日本人と欧米人は「腸の中」まで違っていた!ゲノム解析によって判明した「人種」と「腸内細菌」の関係

「お腹の調子が悪くて気分が落ち込む」という経験がある人は多いのではないだろうか。これは「脳腸相関」と呼ばれるメカニズムによるものだ。腸と脳は情報のやりとりをしてお互いの機能を調整するしくみがあり、いま世界中の研究者が注目する研究対象となっている。

腸内環境が乱れると不眠、うつ、発達障害、認知症、糖尿病、肥満、高血圧、免疫疾患や感染症の重症化……と、全身のあらゆる不調に関わることがわかってきているという。いったいなぜか? 脳腸相関の最新研究を解説した『「腸と脳」の科学』から、その一部を紹介していこう。

*本記事は、『「腸と脳」の科学』(講談社ブルーバックス)を抜粋、編集したものです。

私たちヒトを生物分類の階級に従って表記すると、動物[界]、脊椎動物[門]、哺乳[綱]、サル[目]、ヒト[科]、ヒト[属]、サピエンス[種]となります。

つまり、界、門、綱、目、科、属、種の順の分類階級があります。この分類階級は、進化の過程をたどることのできる道しるべです。

同じ階級に属している生物同士は、性質も似通っています。例えば、ヒト科に属している生物にはチンパンジー属やゴリラ属があります(図2─1)。

メタゲノム解析によって、ヒトの腸内マイクロバイオータもこのように分類することが可能になったのです。解析の結果、ヒトの腸内マイクロバイオータの99%以上は、細菌界における以下の4つの門が優勢であることがわかりました。

1ファーミキューテス門(Firmicutes:名称がBacillotaに改訂された)

2バクテロイデス門(Bacteroidetes:名称がBacteroidotaに改訂された)

→ヒトの腸内に多く存在する腸内細菌の代表格で、腸管免疫に影響を与える

3アクチノバクテリア門(Actinobacteria:名称がActinomycetotaに改訂された)

4プロテオバクテリア門(Proteobacteria:名称がPseudomonadotaに改訂された)

※文献等では旧名称が用いられることが多いため、本記事も旧名称で統一します。

保有しているヒトは非常に少ないのですが、その他、フソバクテリア門(Fusobacteria)やウェルコミクロビウム門(Verrucomicrobia)、ユーリアーキオータ門(Euryarchaeota)などの細菌も含まれています。

なお、日本人の腸内マイクロバイオータは、紹介した4つの門の細菌が90%以上を占めていますが、人種によって少し異なります。欧米人では、4つの門に加えて、ウェルコミクロビウム門とユーリアーキオータ門が加わりますが、日本人ではこの2門は極めて少ないです。