日本製鉄USスチール買収難航で…橋本英二会長「財界総理」の座はどうなる？【政官財スキャニング】
米政府が製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収を先送りし、次期経団連会長の人事に影響が出る可能性がある。
日本製鉄の橋本英二会長は、買収問題の決着が遅れると次期経団連会長候補としてマイナスとなる可能性がある。
買収が11月の米大統領選後に解決されると、日本製鉄にとって追い風ではなく逆風になるかもしれない。
【政官財スキャニング】#85
官界通（同=官） 製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収を認めるか、米政府の判断が先送りされたが、これが来年に交代する経団連会長の人事に影響するか？
政界通 会長候補のひとりとされる日本製鉄の橋本英二会長（68=写真）にとって、買収問題が決着しないとマイナスになるということか？
財界通（同=財） 今年初めのこの欄で、橋本氏が社長から会長に退いても日本製鉄では珍しいCEOになって買収の指揮を執ることを取り上げ、成功すれば経団連会長人事に追い風になると指摘したが、決着が11月の米大統領選後になれば逆風になるな。
官 そうだろう。大統領選で民主党のハリス候補も共和党のトランプ候補も「買収は米国の安全保障上、反対だ」としている。買収を審査している対米外国投資委員会の結論が選挙後になれば、どちらが大統領に決まってもすぐに買収を認めるわけにはいかない。日本製鉄には厳しい状況になる。
■米政府の判断は大統領選後
財 橋本氏は若いときに米ハーバード大の大学院へ留学し、グローバル事業畑を歩んだ国際派だ。日本製鉄の今後にはUSスチールの買収が必要だという判断は「さすが」と思わせたが、買収が日常茶飯事の米国でここまで難航するとは思わなかっただろう。
政 橋本氏は9月上旬にバイデン現大統領へ「買収を適正に判断してほしい」とする文書を送り、早く認めるように要請したようだな。
財 さらに副社長を米国へ派遣し、対米外国投資委員会の幹部に「安全保障上の懸念はない」と主張させて、早く認めるように求めたらしい。
官 次の経団連会長は年内に内定するようだが、日本製鉄の動きはそれに間に合わせようというようにも映るね。
財 それは別問題だろうが、財界には「次の米大統領と対立する形のままでは、日本の経済界で頂点に立つ経団連会長にふさわしくない」という声も出ている。
政 「財界総理」とも言われる経団連会長だ。うまく着地してもらいたいというのは、当然だ。
構成=竜孝裕（ジャーナリスト）
