研ぎ澄まされた「走りのDNA」に驚嘆! スバルWRX STI tS タイプRA試乗【10年前の再録記事プレイバック】

AI要約

スバルWRX STIの最終進化形モデルであるtSタイプRAについて国沢光宏がチェック。ハンドリングやサスペンションの進化に驚きつつも、エンジン性能には改善の余地があると感じる。

STIのコンプリートカーは「S」「R」「tS」のラインナップがあり、今回の「tSタイプRA」はより速さを追求したモデルであり、売れ行きも好調。

詳細スペックや価格など、tSタイプRAの特徴や魅力について紹介。限定生産車である点も魅力の一つとなっている。

研ぎ澄まされた「走りのDNA」に驚嘆! スバルWRX STI tS タイプRA試乗【10年前の再録記事プレイバック】

 現行スバルWRX STIの最終進化形モデルともいえるtSタイプRA(Record Attempt=記録への挑戦)。スペックCをベースに徹底的にSTIが性能を磨き込んだモデルだが、歴代インプレッサSTIコンプリートカーのなかでは「S204」をベストに選んだ国沢光宏がチェック!(本稿は「ベストカー」2013年8月26日号に掲載した記事の再録版となります)

文:国沢光宏/写真:平野 学

 いやいや驚いた!

 ナニかと言えば11:1というステアリングギアレシオに、でございます。

 なんと!WRカーと同じなんだとか。というかWRカーのギアレシオって、そんなにクイックだったのね!

 さっそく走り出してみたら、いろいろな意味で、標準となっている13:1のギアレシオとまったく違う。

 人間のセンサーは20%違うと誰でもハッキリわかるというけれど、今回のギアレシオの差ってかぎりなく20%に近い。

 動き出した瞬間から「あらら?」と思うことだろう。ただ案外と違和感がない。ふつうに走れるのだった。

 最初の印象は「ハンドルが重い」。そらそうだ。ハンドルを少し動かすだけで激しく舵角がつくのだから。軽かったらアブないでしょ。

 続いて「おお!確かにクイックだ!」。

 本格的にタマげるのはワインディングロードに入ってから。イメージとしちゃカート!初めてカートに乗った時を思い出してほしい。手首を動かしたくらいで曲がるクイックさに驚くと思う。

 それと似ている。ハンドルの切れ角が圧倒的に小さく、クルマがヒラヒラ走ってくれるのだ。

 ターマックラリーのようなワインディングロードをわずかな舵角で気持ちよく走っていると「これがWRカーの味か!」と単純なジジイは感銘を受ける。

 開発を担当した森さんに聞くと、「単にステアリングギア比を早くすると、落ち着きがなくなります。そこでリアを補強しています。高速域で落ち着きがなくなると、クルマ全体のイメージが悪くなりますから」。

 確かにギアレシオを早くした「副作用」を感じないからタイしたもんです。高速コーナーなんかジワッとハンドルにチカラを入れるだけで曲がれちゃう。

 サスペンションも大幅に進化した。標準と同じKYB製だというが、滑らかに動くうえ、微小入力でもキッチリと減衰力を出している。

 「やればできるじゃないの!」と思ったほど。標準モデルより減衰力を高めていると言うことだが、むしろ乗り心地がよくなった。

 このふたつの点は、私が歴代最高と推す『S204』(2006年登場)を超えてますね。

 ただし、エンジンに関しちゃ手組みで320psを超えるS204に届いていない。このクルマを買ったらマフラーとコンピューターは交換したいと思う。

 おっと、クルマの紹介をしていなかった。ここにきてSTIのコンプリートカーは難解になりつつある。『R』だの『S』だの『tS』だの入り乱れてしまったからだ。

 大雑把に言えば『S』はエンジンや足回り、エクステリアなどすべてに手を加えた豪華タイプ。

 『R』が走りに重点を置き簡素な装備にしたもの。

 今回の新しく登場してきた『tSタイプRA』といえば、速さを追求した『RA』をさらに進化させたという。一番スポーティなインプレッサと言い換えてもよかろう。

 車重を1450kgに軽量化。ボールベアリングターボでレスポンスの改善を狙う。

 開発のキーワードを並べると「誰がどこで乗っても、みんな気持ちがいいと感じる走る」「日常ユースで楽しい強靱でしなやか」「ドライバーが意のままに操れる4輪の接地性」「固めるところを固め、いなすところはいなす」などなど。

 このところ納得の行くSTIのコンプリートカーがなかったけれど、こいつは久々に面白い!と思ったら売れゆきも順調らしく、200台の「NBRチャレンジパッケージ」は完売。100台作る標準モデルも61台が売約済みとのこと。

 ・全長:4605mm

・全幅:1795mm

・全高:1465mm

・ホイールベース:2625mm

・エンジン:水平対向 4DOHCターボ

・総排気量:1994cc

・最高出力:308ps/6400rpm

・最大トルク:43.8kgm/3200rpm

・トランスミッション:6MT

・サスペンション:F)ストラットR)ダブルウィッシュボーン

・タイヤ:245/40R18

・価格:441万円

※300台限定

 (写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)