内閣府の基調判断は2023年5月以来の上方修正…地震や台風は「8月の景気」にどう影響したか【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

AI要約

景気ウォッチャー調査の結果、現状判断DIは改善傾向にありつつも景気判断の分岐点を下回り続けている一方、先行き判断DIは5ヵ月ぶりに50.0を超えるなど、先行きへの期待が高まっている。

気象現象や自然災害が景況感に影響を及ぼし、景気不透明感が政治要因などから高まる中、景気指標が上方修正されるなど、様々な要因が経済動向に影響を与えている。

暑さに関連した猛暑や自然災害による影響、旅行や消費動向への影響など、季節や地域による経済への影響が示唆されている。景気の動向は今後も注目が必要である。

内閣府の基調判断は2023年5月以来の上方修正…地震や台風は「8月の景気」にどう影響したか【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

“景気の予告信号灯となる身近なデータ”として、景気ウォッチャー調査を取り上げます。8月調査では、ほかの2つのDI値が景気判断の分岐点である50.0を割るなか、先行き判断DIが5ヵ月ぶりに50.0を超え。宮崎県の地震や南海トラフ地震臨時情報の発表、台風の上陸など自然現象が景況感に影響しました。総裁選の結果など、政治要因が景気の先行き不透明感を高めています。エコノミスト・宅森昭吉氏による解説をみていきましょう。

8月「景気ウォッチャー調査」では、現状判断DI(季節調整値)が49.0となり、前月より1.5ポイント上昇しました。現状水準判断DI(季節調整値)は47.8となり、前月より1.2ポイント上昇しました。どちらも3ヵ月連続の改善ですが、6ヵ月連続で景気判断の分岐点の50.0を下回っています。

一方、先行き判断DI(季節調整値)は50.3となり、前月より2.0ポイント上昇し5ヵ月ぶりに景気判断の分岐点の50.0を上回りました。内閣府の基調判断はこれまでの「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」から「景気は、緩やかな回復基調が続いている」に変更しました。2023年5月以来の上方修正です。

「酷暑」の影響

今年も昨年に続き、暑い夏でした。福岡県太宰府市では、最高気温が35℃以上の猛暑日が8月27日に40日連続となり、「連続猛暑日」の国内最長記録を更新しました。8月の現状判断での「猛暑」関連のコメント数は124名と7月の104名から増加し、8月の「猛暑」関連現状判断DIは45.6なりました。なお、2~3ヵ月先の先行き判断での「猛暑」関連のコメント数は32名、「猛暑」関連先行き判断DIは50.0です。秋になり気温が落ち着けば、景気に対する影響はほぼなくなることを示唆していると思われます。

北海道の旅行代理店・従業員が「宮崎県の地震や南海トラフ地震臨時情報の発表、猛暑や台風の上陸など、旅行敬遠につながる要因が多く、予約の低迷や旅行の取りやめといった動きがみられる。ただし、3ヵ月前も景気が良くなかったことから、下げ止まりという評価になる」と、「変わらない」という判断理由をコメントしています。