45mmが好感触! スマートウォッチとして洗練された「Google Pixel Watch 3」レビュー

AI要約

グーグルの新しいスマートウォッチ「Google Pixel Watch 3」が登場。バッテリー持ちが改善され、フィットネス機能が充実している。

新型は45mmと41mmの2サイズ展開、アルミニウムケースを採用。45mmモデルを推奨。

バッテリー容量が大幅に増加し、バッテリー持ちも向上。Fitbitアプリとの連携も強化されている。

45mmが好感触! スマートウォッチとして洗練された「Google Pixel Watch 3」レビュー

9月10日に発売するグーグルの純正スマートウォッチ「Google Pixel Watch 3」をレポートします。バッテリー持ちが改善され、フィットネス機能がより充実しました。

 グーグルの純正スマートウォッチ「Google Pixel Watch 3」が、9月10日に発売されます。バッテリー持ちが改善され、フィットネス機能がより充実。選べる2つのサイズ展開になったPixel Watch最新モデルの実機をレポートします。

 

45mmと41mmの2サイズ展開になった!

 Pixelシリーズ初のスマートウォッチは、2022年秋に発売されました。最新モデルは第3世代。正円形のアルミニウムケースを採用するデザインはほぼ変えていませんが、従来からある41mmのモデルのほかに、ひとまわり大きな45mmのモデルが追加されました。

 

 どちらのサイズもアルミケースはゴールド、シルバー、ブラックの3色展開。バンドはホワイト系のPorcelain、ブラック系のObsidian、グレー系のHazelが共通で、41mmモデルにはピンク系のRose Quartzがあります。

 

 筆者は初代のPixel Watchから試してきましたが、第3世代のモデルは45mmのPixel Watchを推したいと思います。画面のサイズが大きくなったことで表示される情報が見やすくなりました。

 

 筆者の感想ですが、41mmのPixel Watchは手首に装着すると「こじんまり」としてしまうので、スマートウォッチというよりもフィットネストラッカーを付けているような「ガジェット感」が強くありました。45mmのPixel Watch 3は「スマートウォッチを着けている満足感」が得られます。筆者の細い手首に装着した時のバランス感も、なんとなく45mmの方がしっくりとくる手応えがあります。

 

特に45mmモデルはバッテリー持ちが良くなった

 45mmのモデルは41mmのPixel Watch 2よりも、内蔵バッテリーのサイズが35%大きくなりました(420mAh)。Pixel Watch 3はグーグルが品質にお墨つきを与えている「Actuaディスプレイ」を搭載した、初のグーグル純正スマートウォッチです。最大輝度が2000nitsまで出せるので、明るい昼間の屋外でも情報が見やすいことも特徴ですが、画面の点灯していない箇所は明るさを1nitまで下げたり、「常に表示状態のディスプレイ」をオンにした時には、表示に合わせてリフレッシュレート(描画応答速度)を最大60Hzから1Hzまで自動で切り替えながら消費する電力を抑えます。

 

 ほかにもクアルコムによる高性能・高効率なウェアラブルデバイス向けのSoC「Snapdragon W5(SW5100)」と、最新のWear OS 5との合わせ込みを入念に図ったことで、Pixel Watch 3はバッテリーのスタミナ性能が向上しています。

 

 グーグル的には「1日中持続するバッテリー」と表現していますが、筆者の体感としては45mmのモデルならばフル充電から1日半以上はバッテリーが余裕で持続します。「バッテリーセーバー」をオンにすると、フル充電から36時間の連続使用が可能です。充電残量が残り15%を切るとバッテリーセーバーが自動でオンになるように設定変更もできます。

 

 バッテリーの充電速度も速くなりました。41mmモデルどうしで比べると、Pixel Watch 3はPixel Watch 2よりも約20%高速化しています。45mmのモデルをバッテリー残量が50%の状態で専用の充電器に乗せてチャージすると、30分前後で満充電になりました。ベッドに入る前に充電を済ませておけば、睡眠計測を済ませた後も1日中バッテリー切れを心配せずに乗り切れそうです。

 

Pixelスマホとの連携も充実

 Google Pixelシリーズのスマホとの機能連携が、ますます使いやすくなりました。Pixel Watch 3にはUWB(超広帯域無線通信)に対応するチップが載っています。Pixel 9/8/7のProシリーズにペアリングすると、スマホの画面をスワイプするだけでロック解除が素速くできます。Pixel 5のスマホ以降から対応するBluetoothによるWatchアンロックよりも、UWBの方が動作が速く正確なのが特徴です。筆者は指紋や顔認証、パスコードを使わないWatchアンロック機能が手袋やマスクを身に着けている冬場の時期に重宝します。

 

 Gooleマップはペアリングしたスマホでオフライン地図をダウンロードしておけば、Pixel Watch 3のストレージに転送してオフラインで使えます。

 

 筆者が仕事でよく使うグーグル純正の「レコーダー」アプリがPixel Watchに搭載されました。ウォッチ上での文字起こしには対応していませんが、最初はウォッチのストレージに保存される音声ファイルのデータを、ペアリングしたPixelシリーズのスマホに同期させればスマホ上で文字起こしができます。

 

 今回筆者は試していませんが、スマートカメラ「Google Nest Cam」のビデオストリーミングをウォッチの画面で確認したり、メディアストリーミングデバイスの「Chromecast with Google TV」をウォッチから遠隔操作する機能なども揃っています。

 

Fitbitアプリによるフィットネス機能が洗練された

 Pixel Watch 3があれば、グーグルが提供するFitbitアプリによるフィットネス機能がとても快適に使えます。

 

 ウォッチを装着して計測できるエクササイズは40種類を越えました。ランニングにウォーキング、エリプティカル、フィットネスバイク、サイクリングにローイングマシンなど一部のエクササイズはワークアウトの開始・終了を検知してアラートをウォッチの画面に表示します。

 

 筆者はよくランニングをするので、Pixel Watch 3とFitbitアプリが連携するランニングコーチが役に立っています。スマホのFitbitアプリから「5分走って1分休憩を5回繰り返す」といったランニングのプランを作成して、走る時にウォッチから呼び出します。ウォッチが休憩のタイミングを音声とハプティクスの振動で知らせたり、ゆっくり走っているとペースアップのアラートを出してくれます。ウォッチに内蔵する心拍センサーと機械学習によるトラッキングの精度が向上したことで、ランニング時の心拍数表示が従来のモデルよりも正確になっているようです。

 

 ランニングのデータを元に心拍数の推移をグラフ化したり、ウォッチによるモーション検知と機械学習を活用した「フォーム分析」などFitbitアプリのダッシュボードから見られる分析とガイダンスの情報は驚くほど充実しています。

 

 PixelシリーズとFitbitモバイルアプリ、Googleアカウントがあればかなり充実したワークアウトのデータが無料で参照できることが驚きです。よほどストイックな姿勢でエクササイズに打ち込まない限り、1つひとつデータの変化に目をこらすことはないかもしれませんが、筆者はアプリにデータが蓄積されていくほど、体を動かすモチベーションが高まる実感がありました。

 

 Pixel Watch 3には月額640円/年額6400円のFitbit Premiumの6ヵ月無料体験が付いてきます。Fitbit Premiumを契約すると、ユーザーのワークアウト習慣に基づいてGoogle AIがおすすめのラインニングプランを作成してくれたり、毎月の睡眠の傾向がわかる「睡眠プロフォール」の作成、様々なワークアウトのコーチングビデオが活用できます。

 

 最近はYouTubeを開くと様々なエクササイズのコーチングビデオが見つかります。Fitbit Premiumの良いところは「目的に合ったビデオが検索しやすいこと」と「画質」です。一方でYouTubeに比べると「1本の動画の尺が長い(3分ぐらいでサクッと体を動かせる動画がない)」ことです。例えばFitbitアプリで「コアトレーニング」系のコーチングビデオを再生したら、Pixel Watch 3で自動的に計測を始めてほしいところですが、そういった連携機能もいまのところありません。Fitbit Premiumアプリはお試しの間に使い倒してみて、半年以降契約を続けるか判断すれば良いと思います。

 

エクササイズからの回復度を確認したり負荷目標を設定できる

 Pixel Watch 3にはユーザーの健康を見守るための新しい機能が追加されています。いくつか試してみて役立ちそうな手応えがあったものを紹介します。

 

 ひとつは「今日のエナジー」と「有酸素運動負荷」です。ふたつの指標をわかりやすく言い換えるならば「今日の元気度」と「フィットネス目標」です。

 

 前者はユーザーの心拍や睡眠など、Pixel Watch 3が集めたユーザーの生体データを元に「回復度」を調べて、Fitbitアプリが1~100の数値の範囲でエナジースコアを導き出します。ウォッチを装着して眠った翌朝にスコアが算出されます。

 

 スコアは毎日変わりますが、1日の間で減ったり増えたりするものではありません。筆者は1週間計測を続けて、一番よい日のスコアが「68」、悪い日が「47」でしたが、いずれも採点は「良好」でした。おそらく心拍変動が大きかったり、睡眠が足りていない日にはもっと悪いスコアが表示されて、その日の運動は避けたり、軽めに済ませるべきであることをウォッチが知らせてくれるわけです。

 

 「有酸素運動負荷=フィットネス目標」の方は、ユーザーが健康増進、あるいは健康維持のどちらの目的で日々のトレーニングに取り組むのか、Fitbitアプリにあらかじめ「姿勢」を伝えるとユーザーにとって最適な運動の目標値を導き出してくれる道しるべのような機能です。この機能はユーザーの運動習慣をウォッチが14日以上学習してから「目標」を生成してくれるものだったことから、今回のテスト期間に間に合いませんでした。また改めて報告しようと思います。

 

 Pixel Watchのユーザーが朝目覚めると「Fitbitモーニングブリーフ」が立ち上がります。「今日のエナジー」の数値、目標として設定したエクササイズの到達回数、そして天気など毎朝ダイジェストを届ける気配り機能です。

 

 Pixel Watch 3は、眠っている間に装着し続けることで睡眠の質や睡眠段階の記録などができます。ウォッチの設定から「自動おやすみ時間モード」をオンにしておくと、機械学習アルゴリズムによってウォッチを装着しているユーザーが眠りについたことをデバイスが自動で検知して、睡眠トラッキングに必要な情報を収集したり、端末のバッテリーライフを節約します。おやすみ時間モードにはウォッチの設定からマニュアルで切り替えることも可能です。

 

 初代Pixel Watchの誕生から2年が経ち、3代目のPixel WatchではいよいよハードウェアがFitbitのプラットフォームを取り込んで密接に連携、ユーザーのフィットネスを見守る機能が成熟した手応えがあります。Fitbitアプリの無料プランの範囲でも、コーチングやユーザーの健康を見守る機能がとても充実しています。スマートウォッチらしさがひときわ洗練されたPixel Watch 3がベストな買い時を迎えました。

 

 

筆者紹介――山本 敦

 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

 

 

文● 山本 敦 編集●飯島 恵里子/ASCII