ミズアブが食品廃棄問題を解決⁉ 嫌われ者の虫がつくる食物循環社会

AI要約

山形大学の准教授、佐藤智氏が率いるプロジェクト「ヤマダイミズアブ」では、アメリカミズアブを活用して食品廃棄物を資源化する取り組みが行われている。

ミズアブの幼虫は食品廃棄物を食べ、そのフンを肥料として再利用することで循環システムを作り出している。

幼虫が与えられた食品を効率的に処理し、たんぱく質飼料や肥料として活用されている。

ミズアブが食品廃棄問題を解決⁉ 嫌われ者の虫がつくる食物循環社会

ハエ目の一種アメリカミズアブが、食品廃棄物を処理してくれるという。さらに幼虫はたんぱく質飼料として、フンは肥料としての有効活用もできる。この技術の普及と農業利用の研究に取り組んでいるのが、山形大学農学部准教授の佐藤智氏。生態学を専門とする佐藤氏は、自然界の循環システムを人間社会にも取り入れるべくミズアブ研究に励んでいる。一連のプロジェクトについて話を聞いた。(聞き手 麦角社・渡辺悠樹)

◆佐藤智(さとう・さとる)

1995年、山形大学農学部卒業。1997年、同大学修士課程修了。その後、ポスドクをしながら海外を放浪する。2002年、英国イーストアングリア大学にてPhD取得。2009年から現職。専門は農業生態学。研究テーマは、アメリカミズアブなど身近な生物の機能を人間のくらしに活用する方法の開発。インドネシアなど熱帯の山村での農作業や調査も行う。

――アメリカミズアブを使った食品残渣(ざんさ)の資源化プロジェクト「ヤマダイミズアブ」とはどういった取り組みですか。

私たちの研究室では、アメリカミズアブ(以下、ミズアブ)を使って、生ゴミを資源に変えるプロジェクトを進めています。ミズアブの幼虫に生ゴミを食べさせることで、食品を廃棄するコストを軽減できるだけではなく、幼虫を動物の飼料に、フンを肥料として活用できます。

私たちはこのミズアブ研究を、プロジェクト「ヤマダイミズアブ」と呼んでいます。というのも、山形大学キャンパス内で採取した個体からこのプロジェクトが始まったためです。

山形大学内の大学生協購買部などから出る生ゴミなどを引き取ってミズアブの幼虫に与え、これまでの3年間で約6tの処理を研究室で行ってきました。生産された飼料や肥料は、大学での試験研究に用いる他、プロジェクトに協力いただいている方々に実際に使用してもらっています。

ミズアブは自分のフンも食べます。幼虫は、与えられたエサを食べてフンをし、そのフンをまた食べて…と、これを繰り返すことで、ゴミの量が劇的に減っていくんです。

例えば、コンビニ弁当のゴミ1kgにミズアブの幼虫を入れると、2週間でほとんど食べ尽くしてしまいます。元のゴミから約300gの重量にまで減り、そのうち約200gは幼虫の総重量、残りの約100gがフンになります。幼虫の重量の半分近くがたんぱく質です。