開業資金を「生活費〇ヵ月分」で計画すると失敗する理由 (横須賀輝尚 経営コンサルタント)

AI要約

資格取得に興味がある人や独立を考える人に必読のQ&Aを紹介。

開業資金の適正金額について、個人の状況によって異なることを解説。

開業資金を計算する際には生活費だけでなく販促費も考慮する必要がある。

開業資金を「生活費〇ヵ月分」で計画すると失敗する理由 (横須賀輝尚 経営コンサルタント)

大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書「資格起業バイブル」から、再構成してお届けします。

『Q.開業資金はいくら準備すればよいでしょうか?200万円で大丈夫と聞いたのですが……。

開業資金をいくら用意すればよいか悩んでいます。市販の本では100万円だったり、50万円だったりしますが、直接開業した人に聞くと200万円程度という方が比較的多かったです。200万円というのは成功できる最低ラインなのでしょうか?』

すでに独立開業して事務所の経営を軌道に乗せている士業の方たちに開業資金の金額を聞くと、かなりばらつきがあります。一般的には100万円から300万円程度が多いようですが、私のように30万円から40万円程度で開業してしまう人もなかにはいます。

結論からいえば、成功する最低ラインの金額というのは存在しません。たった10万円の開業資金でも、今日明日にも仕事が取れるような営業力のある方にとっては、10万円という数字は心細い金額ではないのかもしれません。

逆に300万円を用意できたとしても、営業に自信がなければ頼りない資金に見えてしまいます。このように開業資金の適正というのは各人によって異なってきますので、仮に平均値を知ったとしてもあまり意味がありません。

とはいえ、あまりにも「個々人によって違う」というだけでは知識にも知恵にもなりませんので、一定の目安を知る方法をお伝えします。

まずは毎月の純粋な生活費を算出します。食費や賃貸住居に住んでいればその家賃などがこれに当たります。仮にその金額が30万円だとしましょう。次に開業期間の想定をします。最初に営業を開始してから仕事が取れるようになるまでの期間を6ヶ月と想定します。自信がある方は3ヶ月と設定してもかまいませんが、精神的余裕を持って臨むためにも、あえて基準をつくるなら最低6ヶ月くらいは必要です。

ここで毎月の生活費と開業期間からトータルの生活費を計算します。6ヶ月分の生活費の計算は、30万円×6ヶ月で180万円となります。そして必要な備品代が20万円として、合計200万円……と考えるのは失敗の元です。

多くの出版物などではこの開業準備金を「生活費」を基準に考えることが多いようですが、これは「給料をもらうことなく、ただ生活するためだけの資金」です。つまり、販促費などの「ビジネスのために使うお金」が入っていないのです。月々の生活費に「販促費」(ここでは純粋な広告費のほかに、人脈作りのために交流会に参加するなど全般的な販促活動にかかるお金を含みます)を加えた金額をもって算出しないと、ただじっと指をくわえてお金がなくなるのを待つだけになってしまいます。

では、月の販促費はいくらと考えればよいのでしょうか。

私が考える営業手法では、人に会うこととネット営業が基本になるので最低でも10万円、できれば15万円くらいは販促費予算として組みたいところです。

これを先ほどの生活費のケースに当てはめて考えると、(30万円+10万円)×6ヶ月となり、240万円。そして備品代を加算すると260万円ということになります。

「販促費に月10万円もかけなければ仕事が取れないのか」と思われる方もいるかもしれませんが、販促費がない場合は足で稼ぐしかなくなってしまいます。私自身もお金がない状態から仕事を取りましたが、広告費を使って仕事を取ることに比べれば非効率です。ですから、せっかく開業資金を準備する機会があるのなら、販促費を含めた資金を準備したいところです。

ところで、開業資金を自己資金だけでまかなうか、お金を借りるかという問題もあると思いますが、おそらく先ほど紹介した金額は予想していた金額よりも多かったのではないでしょうか。

開業前に給料から積み立てておくのがスタンダードで大きなリスクもありませんが、反面時間がかかりすぎるというデメリットもあります。何年も待てないという方は、借金について見識を深め、借りるということも検討してみてください。