トヨタEV生産「3割縮小」でも、シフト速度が落ちただけ そもそも「直系サプライヤー」は生き残れるか? という根本疑問

AI要約

EVシフトによる自動車産業の変革と、直系サプライヤーに求められる変化について述べられている。

トヨタやホンダなど主要自動車メーカーと直系サプライヤーとの関係見直しや部品生産の課題について具体的に紹介されている。

具体的な事例として、ホンダが直系サプライヤー八千代工業を売却し、トヨタもデンソーなどエンジン関連事業の売却を進めている状況が示されている。

トヨタEV生産「3割縮小」でも、シフト速度が落ちただけ そもそも「直系サプライヤー」は生き残れるか? という根本疑問

 現在、世界的に環境対策を重視した「電気自動車(EV)シフト」が進んでおり、内燃機関の自動車からEVへの移行が急速に進行している。従来の自動車とは構造が異なるEVは、部品構成にも変化をもたらしており、結果として部品を製造・開発するサプライヤーにとって大きな変革期を迎えている。

 国内の主要な自動車メーカーにはトヨタ、日産、ホンダなどがあり、これらのメーカーは

「直系サプライヤー」

と呼ばれる大規模なサプライヤーと密接に関わっている。直系サプライヤーは、自動車メーカーとともに技術の開発や生産に深く関与しており、自動車部品において中核的な役割を果たしている。特に、内燃機関のエンジン関連部品は部品点数が多く複雑なため、直系サプライヤーの開発力と供給力がなければ最新のエンジンは成立しない。

 しかし、EVシフトによってエンジンの数が減ることで、サプライヤーの構造にも変化が求められている。EVの動力源であるモーターや駆動用バッテリーは、機械技術が主役のエンジンとは異なり、電気系で構成部品の点数も少ないため、サプライヤーが生産・供給する部品数が減少する。

 このEVシフトが進むにつれて、従来の構造ではエンジン部品の収益性が低下し、自動車関連のサプライヤーはさまざまな手段でEVシフトに対応せざるを得なくなっている。この変化は直系サプライヤーにも当てはまり、ここ1年でさまざまな動きが見られるようになっている。

 トヨタやホンダは、2023年から2024年にかけて直系サプライヤーとの関係を見直している。特にホンダが八千代工業(埼玉県狭山市)を売却したことは、業界に衝撃を与えた。

 ホンダは2023年7月に、連結子会社の八千代工業の株式をインドの自動車部品大手マザーサングループに譲渡することを発表した。八千代工業はホンダの直系サプライヤーとして70年近く、燃料タンクやサンルーフを手がけてきたが、燃料タンクはEVシフトによって需要が減少しつつある部品であるため、八千代工業を手放すことは業界関係者には予測できなかった。

 八千代工業は、燃料タンクの生産で培った樹脂部品技術を生かしてEV向けの部品事業を展開する見込みだが、競合他社が多い分野であるため、将来性は不透明である。なお、社名も10月から、マザーサンヤチヨ・オートモーティブシステムズとなる。

 一方、トヨタは直系サプライヤーであるデンソー、豊田自動織機、アイシンとの関係見直しを急いでいる。関係会社で持ち合っていた株式を放出することで、EVシフトに対応しようとしている。株式売却で得た資金は電動化技術や将来的な技術開発に投入する計画だが、日本のメーカーやサプライヤーは世界的なEVシフトに出遅れているとの意識が強く、迅速な開発が求められている。

 さらに、デンソーはスパークプラグや排ガスセンサーといったエンジン関連事業を他社へ売却する交渉を進めている。この事業は同社が60年近く手がけてきたもので、EVシフトの影響の大きさを物語っている。デンソーは今後もエンジン関連の事業売却を進め、一気に電動車用サプライヤーへと生まれ変わろうとしている。