震災から13年 「陸前高田市」の観光復活は可能か？ カギとなるBRTアクセスの壁と新海誠作品
筆者は岩手県盛岡市での会議後、BRTを利用して陸前高田市に向かった。
大船渡市と陸前高田市の都市規模の違いがBRTの利用状況に影響している。
陸前高田市では商業施設や観光施設が整備されており、津波被災地の景観も残っている。
筆者（増淵敏之、文化地理学者）は8月上旬、岩手県盛岡市で開催された会議に参加し、その後、同県南東部の陸前高田市に向かった。目的は公務と私用で、会議が終わったのは16時過ぎだった。
そのため、当日中に陸前高田市に到着するにはレンタカーを借りる必要があった。しかし、公務が翌日の9時からだったため、バスで南部の大船渡市まで行き、1泊した後、翌朝にBRT（バス高速輸送システム）を利用して陸前高田市に向かうことにした。
BRTは、2011（平成23）年3月11日に発生した東日本大震災で大きな被害を受けたJR東日本の
・気仙沼線：柳津～気仙沼間
・大船渡線：気仙沼～盛間
の復旧手段として導入された。この路線はJR東日本によれば仮復旧とされているが、震災から10年以上が経過した今では、この地域の主な公共交通になっている。
BRTは大船渡市のBRTターミナルから陸前高田市の高田高校の手前まで専用道路を走る。朝7時45分に大船渡市を発車する便に乗ったが、乗客は筆者を含めてふたりだった。途中で数人が乗り込んできたが、行き違う大船渡方面行のバスには多くの乗客がいた。
これは、大船渡市の人口が約3万7000人で、陸前高田市が約1万7000人という都市規模の違いが影響しているのかもしれない。
泊まったホテルは大船渡市のBRTターミナルの近くにあり、朝に周辺を歩いてみると、比較的大きな商業施設「キャッセン大船渡」があり、約30店舗が集まっていた。食事処も充実しており、全国チェーンの店もあった。
陸前高田市のBRTターミナルを降りると、かさ上げされたエリアに「アバッセたかた」という大型複合商業施設があり、衣料品チェーンのしまむらや地元スーパーのマイヤが中心となっている。市立図書館もその施設内にあった。
近くには津波伝承館や博物館が整備されており、商業施設の周りにはさまざまな店舗が点在している。ただし、津波伝承館から海にかけては広い更地が広がり、廃墟となったビルもまだ残っていた。
