ここで「カンパ~イ」できるなんて! 鉄道ファン至高の瞬間、大井川鐵道の「珍ビール列車」

AI要約

2024年の夏、大井川鐵道でビール列車が運行される。昭和50年代の客車を使用し、ビールを楽しむことができる。

客車にはクーラーがなく、窓を開け放ってビールを楽しむ列車。家山駅ではビアステーションが設置され、生ビールが飲み放題。

ビール列車は大井川鐵道の特別企画であり、昭和時代の雰囲気を楽しむことができる。

ここで「カンパ~イ」できるなんて! 鉄道ファン至高の瞬間、大井川鐵道の「珍ビール列車」

 2024年の夏は大変厳しい酷暑が続きます。さっさと仕事を終え、キンキンに冷えたビールで癒されたい。列車の中で思う存分ビールを飲みたい。できるならば、機関車の牽く懐かしい客車列車で……。

 そんな鉄道ファンの欲張りを叶えられるのが、大井川鐵道「ビール列車2024」です。「レトロ列車でカンパイ!」と銘打ち、同鉄道が保有する「旧客」こと、国鉄の旧型客車をビール列車に仕立てています。

 電気機関車が牽引し、昭和50年代まで国鉄で見られた客車の普通列車を再現。当時を知る人々にとっては郷愁を、若い世代には昭和の客車列車の想像を膨らませ、昭和時代を追体験してもらおうと企画されました。

 連結される客車は戦前や戦後すぐの製造です。クーラーはなく、すべての窓を開け放してビールを堪能する列車となっています。日が暮れかける18時10分に新金谷駅(静岡県島田市)を発車し、ボックス席に長テーブルが設置された車内で、おつまみとロング缶を楽しめます。

 2両の客車のうちオハ35 149は室内がニス塗り。「トーマス号」用にオレンジ色を纏い、本来ウインドウシルとヘッダーの補強板が巻かれる側窓は、上部補強板の無いノーヘッダー仕様となり、連結部の妻部も張り上げ屋根となって丸みを帯びた試作車です。

 スハ43はトラストトレイン所有の元・特急「はつかり」用で、青地の塗装に白帯2本線を巻いています。なかなかマニアックな客車の編成が、2024年にビール列車の編成となり、その空間でビールを楽しめるだけで感動することでしょう。

 大井川鐵道本線は災害により、起点の金谷駅(静岡県島田市)から川根温泉笹間渡駅(同)までの運行となっています。ビール列車はさらに短く、新金谷~家山間を往復します。乗車は約30分と短めなので、ロング缶で十分です。

 その代わり、木造駅舎の家山駅がビアステーションとなり、駅舎内に設置された2か所のビールサーバから生ビールが飲み放題。郷愁感溢れる駅舎にはビアガーデン風の提灯がぶら下がり、静岡おでんなどおつまみも食べることができます。

 約1時間、堂々と駅飲みを堪能したあとは、19時55分に家山駅を発車し、新金谷駅着は20時25分。その後21時03分発の金谷行き連絡電車へ乗り継いで、そこでJR東海道本線へ乗り換えれば、静岡駅から新幹線を使ってその日のうちに東京と名古屋方面へ帰宅できます。

 ビール列車は大井川鐵道のほか、JRや私鉄、路面電車と、全国の鉄道会社が様々な工夫をしながら走らせており、今や日本の鉄道の夏の風物詩となっています。それぞれの鉄道では自社の電車や気動車を使用しますが、大井川鐵道では唯一、電気機関車牽引の旧型客車列車で実施しています。

 大井川鐵道といえば、1976(昭和51)年から蒸気機関車を動態保存しており、年間を通じてSL列車が走り、客車も国鉄から譲渡された何種類もの旧型客車が集う、いわば“動く鉄道博物館”です。近年ではC11形をトーマスに変身させた「トーマス号」が人気を博し、子どもたちの歓声が響き渡ります。

 動ける旧型客車の宝庫だからこそ、「レトロ列車でカンパイ!」が毎年実施できるのかと思いきや、実は旧型客車のみのビール列車は今回が初めてとなります。2023年の実施ではロングシートの7200系電車を使用し、家山駅往復と木造駅舎のビアステーションプランでした。