初代『ウルトラマン」の顔ってこんな「フガフガ」してた? 最初期の造形が違うワケ

AI要約

初期ウルトラマンのマスクが口元が緩んでいた理由を探る。

口元の緩みは口の開閉機能のために設計されていたが、最終的には使われなかった経緯。

マスクの改修により、口元の緩みは修正され、ウルトラマンの顔の特徴が定着した。

初代『ウルトラマン」の顔ってこんな「フガフガ」してた? 最初期の造形が違うワケ

 「ウルトラマン」と聞いて想像される顔は、メタリックながらも均整のとれた微笑みを浮かべているはずです。ソフビ人形やお面などのオモチャを確認するまでもなく、あの顔こそ「われらのウルトラマン」の共通イメージです。

 ところが時折、妙に口元がふがふがしたウルトラマンを記憶している方はいないでしょうか。これは決して記憶違いではありません。

 実際にウルトラマンの口元が緩かった時期はあるのです。ファンの間ではAタイプとして知られる初期ウルトラマンのマスクが、どうして私たちがよく知るウルトラマンと異なっていたのでしょうか。

 例えば第1話「ウルトラ作戦第一号」に登場するウルトラマンの顔を観察してみましょう。なるほど口元がやや弛んでいて、頬にかけて皺の線が入っています。幼少期は気になりませんでしたが、わりと「フガフガ」しているのです。口元ばかりに目がいっていましたが、銀色の肌もわりと凹凸があります。中年としては親近感を覚えずにはいられません。

 このマスクは第14話「真珠貝防衛指令」で新調されるまで使用されました。『ウルトラマン』は全39話ですので、全体の3分の1、ウルトラマンの口元は緩かったのです。

 では、どうして口元が緩かったのでしょうか。これは当初、ウルトラマンの口は開閉する予定だったためです。スーツアクターの古谷敏さんの顔の動きと連動して口元が動く仕様にするため、その部分だけゴム素材のラテックスを使用していました。結局、そのギミックは外されたので、頬にかけて皺が生じ、あの「フガフガ」とした歪みが生まれたのでした。

 その後、度重なる修理でスーツを新調した際に改めて作り直したのが後にBタイプとファンの間で呼称される第14話からのマスクなのでした。この時、マスクの素材もラテックスからFRPという強化プラスチックに変更されたのです。

 またウルトラマンの顔は寄り目をしているように見え、これも予定にはなかったものです。もともとは視界を確保するため目の部分のパーツの一部を透明にする予定でした。これが現場で間に合わず、急遽穴を開けることになったという経緯があったようです。

 ファンのあいだではある種の「教養」となっているウルトラマンのマスクの変遷ですが、単なるマニアックな知識というわけでなく、その向こうにある「ウルトラマンの現場」が立体的に見えてくるのでした。

主要参考書籍:

『特撮と怪獣 わが造形美術 増補改訂版』成田亨 (リットーミュージック)

『ウルトラマン99の謎 : 懐かしのヒーロー』青柳宇井郎、赤星政尚(二見書房)