安い給料、長時間労働…日本人が陥る「仕事は尊い」「働くことには価値がある」という考え方のワナ

AI要約

『ブルシット・ジョブの謎』が、なぜクソどうでもいい仕事がエッセンシャル・ワークよりも高給であるのか、労働観の関連性を明らかにする。

過去には1日4時間労働が可能と予言されたが、その実現は遠のいており、現代日本でも無意味な仕事への価値観が蔓延している。

次回「なぜ「1日4時間労働」は実現しないのか…世界を覆う「クソどうでもいい仕事」という病」では、無意味な仕事の増殖と個人の苦悩について分析する。

安い給料、長時間労働…日本人が陥る「仕事は尊い」「働くことには価値がある」という考え方のワナ

「クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)」はなぜエッセンシャル・ワークよりも給料がいいのか? その背景にはわたしたちの労働観が関係していた?ロングセラー『ブルシット・ジョブの謎』が明らかにする世界的現象の謎とは?

アメリカでは人件費が急上昇し、時給4000円でも人材が採れないくらい、働かない人が増えているという。

日本でもそうした現象は起こるのだろうか。安い給料で働く状況が変わらないなか、「仕事のための仕事」に悩み苦しむ人も多い。

100年前には「1日4時間労働」ですむようになるといった予言もあったが、現実はそうなっていない。注目のロングセラー本『ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか』ではこう書かれている。

〈おおよそ100年前には、働く人たちは組合を組織して、賃上げよりも、労働時間を短縮すること、自由時間を獲得することに重きをおいていたことがみえてきました。そしてその根底には、労働から解放されたいという動機があることがわかりました。

そしていまでもとても尊敬されているその世代随一の経済学者も、100年後には、技術の向上やそれに由来する生産力の上昇によって、人は一日4時間、週3日働けばすむようになっていると予言しています。〉(『ブルシット・ジョブの謎』より)

その後、予言が実現しそうになった時代もあった。

〈50年ぐらい前(1960年代)には、ほとんど働かないですむような世界を多くの人たちがもとめはじめた時代がありました。そして経済学者の予想した通り、客観的にも、可能性としては、その実現は遠いものではなくなっていました。〉(『ブルシット・ジョブの謎』より)

しかし――。

〈世界を支配している人々からすると、それが実現するということは、人々が、じぶんたちの手を逃れ、勝手気ままに世界をつくりはじめることにほかなりません。そうすると、じぶんたちは支配する力も富も失ってしまうことになります。

そこでかれらは、あの手この手を考えます。

そのなかのひとつが、人々のなかに長いあいだ根づいている仕事についての考え方を活用し、あたらしい装いで流布させることでした。

その考え方とは、仕事はそれだけで尊い、人間は放っておくとなるべく楽してたくさんのものをえようとするろくでもない気質をもっている、だから額に汗して仕事をすることによって人間は一人前の人間に仕立て上げられるのだ、と、こういったものです。〉(『ブルシット・ジョブの謎』より)

〈なにかおかしいな、とおもっていても、でも仕事をするということはそれだけで大切だ、むなしかったり苦痛だったりするけれども、だからこそむしろ価値がある、というふうに、人は考えてしまいます〉(『ブルシット・ジョブの謎』より)

現代日本でも「仕事はそれだけで尊い」「仕事をするということはそれだけで大切だ」といった価値観は蔓延している。

もちろん、仕事に就くこと、働くことは、生きるうえで大事かもしれない。

ただ、それを当たり前に受け止めすぎた結果、「1日4時間労働」の世界は遠のいている。

つづく「なぜ「1日4時間労働」は実現しないのか…世界を覆う「クソどうでもいい仕事」という病」では、自分が意味のない仕事をやっていることに気づき、苦しんでいるが、社会ではムダで無意味な仕事が増殖している実態について深く分析する。