“労働嫌い”から出る労働時間削減要求は、持続可能な社会を作らない─「反・反労働」を宣言する経済学者の主張

AI要約

経済学者ハンス・ルジネクは、週休3日制や無条件ベーシックインカムに反対し、労働時間削減だけでは社会を良くしないと主張。

彼は、労働を特別な社会的空間と捉え、仕事の中での出会いや議論が社会的な接合剤となる重要性を強調。

週休3日制は業務圧縮に過ぎず、社会的空間を脅かす可能性があると指摘。

“労働嫌い”から出る労働時間削減要求は、持続可能な社会を作らない─「反・反労働」を宣言する経済学者の主張

スイスのザンクトガレン大学で持続可能な労働について研究する経済学者ハンス・ルジネクは、週休3日制や無条件ベーシックインカムの要求に反対し、単純な労働時間の削減は社会を良くしないと主張する。また、現在流行している「ワーク・ライフ・バランス」のような概念にも反対している。

しかし彼は、従来の働き方を続けるべきだと考えているわけではない。普及している「新しい働き方」の議論は短絡的・近視眼的だと批判しているのだ。

人は、人生の大半を仕事の世界で過ごす。つまり働き方こそが、個々人の生き方を形作り、個人の集合である社会のあり方を規定する。そして結果的に、人類全体の問題を生み出したり解決したりする。

そのような広い視点で「労働」をとらえたとき、私たちに本当に必要なのはどのような働き方なのか。特にパンデミック以降、意味を見失っている知識労働が再び社会に資するようになるためにはどうすればよいのか。独紙「ツァイト」がインタビューした。

──週休3日制や無条件ベーシック・インカムを求める人が多いなか、あなたは「反・反労働派」を宣言しています。その真意は何ですか。

歴史のなかで、多くの人々が労働時間の短縮のために戦ってきましたし、その戦いを続けることには意味があります。経済的にも、いまのように多く働く必要性はありません。そのため、労働時間を減らそうという動きは理解できます。

しかし私は、仕事の世界とは、きわめて重要な社会的空間であり、社会のなかで特別な性質を持つ領域だと考えています。それゆえに、あえて「反・反労働派」を名乗っているのです。

──その特別な性質とは何ですか。

仕事では、意図的に選んだわけではない人との出会いがあります。同僚が、いわゆる運命をともにする仲間となります。それこそが、社会にとってとても重要なのです。仕事の世界とは、そこで議論をしたり、対立したり、解決策を探したりするなかで、社会的な接合剤が作られる場です。

たしかに、平日がもう1日休みになるとうれしいですが、現状、週休3日制は業務を圧縮するだけのように思われます。

業務が圧縮されると、たとえば、オフィスのコーヒーマシンの前で休憩する時間が失われますが、そのことが大事な社会的空間を脅かします。しかし、そのような空間こそ、私たちに必要なのです。気候危機のような人類全体の危機に対処するためにもです。