EVシフトは“働くクルマ”から! 私が軽商用EVの未来を信じるこれだけの理由

AI要約

2024年6月に発表されたホンダの軽商用電気自動車(EV)「N-VAN e:」は、商用車向きのEVとして注目される。商用車は環境負荷の低減や地域貢献にも重要性を持つ。

小型商用車は日常的な利用に適しており、EVの弱点を補うことが可能。また、エンジン車と比べて地域への負担が少ない。

日本の自動車メーカーは商用EVの普及に積極的であり、大手運送会社もEV導入に前向きな姿勢を見せている。

EVシフトは“働くクルマ”から! 私が軽商用EVの未来を信じるこれだけの理由

2024年6月に発表されたホンダの軽商用電気自動車(EV)「N-VAN e:」、個人的には、乗用の「日産サクラ」や「三菱eKクロスEV」以上に、今注目すべきEVだと思っている。サクラとeKクロスEVによって軽自動車がEV向きであることは証明されたが、個人的には商用車もまた、EVに向いたジャンルだと考えているからだ。

EV嫌いの人は、例によっていろんな理由を挙げてはこれを否定してくるだろう。しかし、そういう論は大抵の場合、乗用車の視点で商用車を見ていることが多い。でも現実はそうではない。そもそも両者では、主要なカスタマーの像や購入動機が違う。

先月日本にやってきた台風10号の猛威や、その“迷走”ぶりにも表われいるだろうが、日本周辺でも海水温度の上昇など、地球温暖化の影響がリアルに感じられるようになってきた。こうした状況のなかで活動する企業が、環境負荷の低減に取り組む姿勢を示すのは当然のことだ。後ろ向きの対応をしていると思われ、社会の見る目が厳しくなれば、企業活動そのものが難しくなる。新たに社用車を導入する際、イメージのよいEVを導入するのは無理のない判断だろう。ドライバーの意思で走る乗用車とは違って、商用車はそういった会社の意思で動くのだ。

また機能面で見ても、ルーティンに沿って稼働する例の多い小型商用車なら、一日に走る距離や充電のタイミングなどが予想しやすく、航続距離の短さ、充電時間の長さといったEVの弱点をフォローしやすい。

EVについては、「日本は発電のほとんどを火力でまかなっているので、EV化してもCO2の削減にはならない」という意見も聞くが、EVであればCO2を出すのは発電所となり、われわれの生活空間の近くを走る車両からは排出されない。心理的な問題も勘案すると、この違いは小さくない。特にラストワンマイルを担う軽商用車などは、住宅地のなかに入っていって宅配などのサービスをすることが多いのだ。CO2とともに騒音や振動を生ずるエンジン車とEVとでは、地域への負担や住民の心象は大きく異なってくる。

ホンダはそのことを理解しているメーカーのひとつである。二輪の電動化をビジネスバイクから進めていったのがその証左だ。日本自動車工業会の二輪公式ブログ「MOTO INFO」では、「スーパーカブ」に代えて郵便配達に導入された「BENLY(ベンリィ)e:」の数が、すでに1万台を大きく超えていることを伝えている。スーパーカブのユーザーである筆者としては、あの角の丸い鼓動や湿った排気音がお気に入りなのだけれど、それをノイズに感じる人がいても、まったく否定できるものではない。上述の恩恵も含め、ベンリィe:の普及を歓迎しない道理はないだろう。

四輪の商用EVに話を戻すと、その日本郵便は2024年7月に「三菱ミニキャブEV」を3000台も発注したし、佐川急便はEVベンチャーのASFと軽商用車「ASF2.0」を共同開発。ヤマト運輸は発売前のホンダN-VAN e:の実用性検証を引き受けるとともに、「日野デュトロZ EV」の展開も進めている。東京~大阪間のような遠距離大量輸送には燃料電池を積んだ大型トラックが適しているが、宅配についてはEVとの相性がよいことが、大手3社の動きを見るだけでもわかる。「これ1台でいつでもどこでも」ではなく、目的に応じて車両を使い分けるところも、乗用車とは違うことを教えられる。