二極化する小売株、円安修正で「牛丼」や「家具」復調-百貨店急失速

AI要約

為替市場で円安の修正が進み、小売株のパフォーマンスが二極化している。内需系小売株が上昇し、外需系小売株の百貨店が急悪化している。

2022年ごろから円安が加速し、今年7月に38年ぶりの安値を記録。しかし、日本銀行の利上げと米国の利下げ懸念で急反発し、状況が好転する可能性がある。

木野内栄治チーフテクニカルアナリストは、専門小売企業に注目すべきとし、伊藤琢チーフ・ポートフォリオ・マネジャーは企業の努力により収益力が向上していると指摘。円高基調ならば一部の小売企業の利益率も上昇する可能性がある。

二極化する小売株、円安修正で「牛丼」や「家具」復調-百貨店急失速

(ブルームバーグ): 日本の小売株のパフォーマンスが二極化している。為替市場で円安の修正が進み、輸入コストの増加懸念などこれまであおりを受けてきた銘柄群が反転攻勢。一方、インバウンド消費の増加を通じ円安メリットを享受してきた百貨店株は急失速だ。

7月末を起点にTOPIX小売業指数の構成銘柄別株価パフォーマンスを見ると、牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングスの27%高を筆頭に、立ち食いステーキのペッパーフードサービスが20%高、家具・インテリア用品のニトリホールディングスが20%高、衣料品雑貨のパルグループホールディングスは16%高などこれまで円安に苦しめられてきた「内需系小売株」が上昇率上位に並ぶ。

対照的に、下落率上位を占めるのが円安による訪日外国人客回復の恩恵を受けてきた「外需系小売株」の百貨店。三越伊勢丹ホールディングスが25%安、J.フロントリテイリングが21%安、高島屋は19%安と総崩れだ。

絶対的な国内外の金利差を背景に2022年ごろから円安が加速し、今年7月には対ドルで161円95銭と約38年ぶりの安値まで下落。その後は、日本銀行が利上げする一方で米国の利下げ観測が高まり、株価暴落によるリスク回避の円買いも重なった8月初めに141円台後半まで急反発した。過度な円安は輸入物価の上昇を通じて国内消費の停滞につながっていたため、今後状況が好転する可能性がある。

大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト兼テーマリサーチ担当は、輸入の多さから円高メリットを受けやすく、日本人の利用が主となる専門小売企業に注目すべきだとみている。

日本の小売業はここ数年、円安で厳しい逆風にさらされてきた。しかし、ニッセイアセットマネジメントの伊藤琢チーフ・ポートフォリオ・マネジャーは、こうした環境下でも企業努力を重ねた一部の小売企業は収益力が格段に上がっていると言う。

伊藤氏は「為替市場の先行きは不透明だが、円高基調になるならニトリHDなどは利益率も相当上がるだろう」と述べ、これ以上円安は進まないとみる投資家がニトリHDや他の小売株を買い始めているとの見方を示した。