出雲市斐川町が描く「一町一農場構想」 次世代へ地域一丸に

AI要約

出雲市斐川町では地域の農業発展を目指し、農地を一つの農場に考える"一町一農場構想"を策定し、農地集積率を高めている。

現在の耕地利用率は約120%で、県内・全国平均を上回っている。集落営農組織が大区画圃場整備事業を進め、人手不足や後継者不足の課題に取り組んでいる。

"斐川地域農業基本構想"では、将来の農業像を"ものづくり"、"ひとづくり"、"しくみづくり"、"あきないづくり"の4つに分け、技術革新や集落組織の発展などを推進している。

出雲市斐川町が描く「一町一農場構想」 次世代へ地域一丸に

 島根県東部の出雲市斐川町が管内のJAしまね斐川地区本部は、行政をはじめ七つの農業関連機関と連携し、「斐川町農林事務局」を組織する。同町は西南北を斐伊川に囲まれ、南部が中国山脈系の丘陵地帯、北部が斐伊川で形成された肥沃(ひよく)な沖積平野。農地2285ヘクタールのうち、集落営農組織が50%強、5ヘクタール以上の農地を経営する農家が約33%を耕作する。

 地域の農業発展を目指し将来像を描くため、「斐川町農業再生プラン」を2003年に策定。地区の農地を一つの農場に考える「一町一農場構想」を核に据え、地域一体で作付け計画から土地利用までを計画した。同町農業公社が地域内の農地の土地利用調整を進め、担い手への農地集積率を高めた。集積率は17年度の80・8%から22年度に85%に高まり、目標値の83%も超えた。

 さらに2年3作体系や交付金などによって、転作と水稲作の所得平準化を目的とした「地域とも補償」も構築し、担い手への農地集積を進めながら、水田のフル活用を掲げ耕地の有効活用に取り組んできた。現在の耕地利用率は約120%と、県内・全国平均を大きく上回る。

 町の農地の過半を担う集落営農組織は、大区画圃場(ほじょう)整備事業をきっかけに、37組織に拡大した。一方で、人手不足や後継者不足が課題の一つ。定年帰農者もいるが、若手専従者の採用や外部雇用を行うなど、新たな一歩を踏み出す組織もある。

 人材確保やスマート農業技術への対応など、課題の克服に向け、地域の中心になるのは「斐川町集落営農組合連絡協議会」。農事組合法人サンファーム吉成の組合長で同協議会会長の石川克巳さんは「課題解決に向けた情報共有の場として、集落営農組織のよりどころとしたい」と語る。

 新たな課題解決に向けて22年に打ち出した「斐川地域農業基本構想」では、農業の将来像を「ものづくり」「ひとづくり」「しくみづくり」「あきないづくり」の4分野に分けた。23~33年度の同構想では、技術革新による生産性の向上や集落営農組織の発展など、八つの重点項目の実現に向けた取り組みを進める。

 斐川町農林事務局体制を中心に、次代を担う若い世代につなげる持続可能な農業の実現に向けて一丸となって取り組み、地域農業の一層の発展を目指す。