EVシフトで本当に影響を受ける「自動車部品」は何か? 分野によっては事業拡大の見込みも

AI要約

電気自動車(EV)の普及による自動車産業の変化について。EVシフトにより、部品点数が大幅に減少し、サプライヤーにも影響が及んでいる。

EV関連部品に対する需要増加により、特定のサプライヤーはビジネスチャンスを見出している。例えば、ワイヤーハーネスなどの製造企業は売上高の拡大が見込まれている。

一方で、エンジン部品を手がけるサプライヤーや車体関連部品の製造業者はEVシフトによる影響を受けている。それでも、新たな製品や技術を開発し、市場への適応を図る動きも見られる。

EVシフトで本当に影響を受ける「自動車部品」は何か? 分野によっては事業拡大の見込みも

 電気自動車(EV)は、CO2を排出しないエコカーとして世界的なブームになっている。内燃機関の車からEVへの置き換えが進んでおり、これをEVシフトと呼ぶ。このシフトにより、自動車の部品構成は大きく変化する。内燃機関のガソリンエンジン車とEVの最大の違いは、動力源がエンジンから電動モーターに変わることだ。この変化にともない、自動車全体の部品点数は約3万点から約2万点に大幅に減少すると予想されている。

 特にエンジン関係の部品が不要になるため、自動車メーカーがEVシフトを進めるにつれ、部品サプライヤーに大きな影響が出ている。

 エンジン部品は約1万点から構成されており、エンジン本体の大型部品だけでなく、燃料系や動弁系、排気系などの細かい部品も多い。一方、EVはモーターやバッテリー、電動部品で構成され、エンジンに比べるとシンプルで、部品点数はわずか2000~3000点に収まる。

 自動車メーカーとエンジンはこれまで切っても切れない関係にあり、エンジン部品サプライヤーは重要な位置を占めていた。しかし、EVシフトによって彼らは大変革を求められている。トヨタ直系のデンソー(愛知県刈谷市)は、エンジン関連部品の事業を相次いで売却し、その売却益でEV事業にシフトする方針だ。

 ただし、動弁系や燃料系などの細かい部品を手がける中小サプライヤーにとっては、事業転換が難しい場合が多い。そのため、EVシフトの影響で廃業するサプライヤーも出てきている。

 とはいえ、すべてのサプライヤーがEVシフトによって悪影響を受けるわけではない。むしろ、ビジネスチャンスの到来と捉えるサプライヤーも存在する。

 EVシフトにより自動車全体の部品点数は減少するが、EV関連部品に対する需要は高まるため、売り上げの拡大を見込むサプライヤーもいる。

 住友電工(大阪市)は自動車用ワイヤーハーネス(電力と電気信号を伝える役割を持った部品の集合体。人間の血管や神経に相当する)を手がけるサプライヤーで、国内の主要メーカーだけでなく海外メーカーにも納入している。

 住友電工は2021年ごろに自動車事業の売上高が大幅に下がっていたが、EVシフトが進むにつれて、ワイヤーハーネスを始めとする売上高が急速に伸びており、2025年には過去最高の売上高を見込んでいる。ワイヤーハーネスは、EVシフトにおいて特に重要な分野であり、モーター、インバーター、駆動用バッテリーなどの電動部品を接続する役割を果たしている。住友電工以外のワイヤーハーネスのサプライヤーも、EVシフトに対して前向きな姿勢を示しており、全体として追い風となっている。

 また、EVシフトの影響が少ない分野として車体関連部品が挙げられる。ガソリンエンジン車からEVに変わっても、車体本体の構造には大きな影響がないからだ。しかし、車体製造の技術を生かしてEV用の部品製造に乗り出すサプライヤーも増えている。

 例えば、JFEスチール(東京都千代田区)は持ち前の深絞り技術を生かして鋼製のEV用バッテリーケースを開発している。バッテリーケースは軽量化のためにアルミで作られることが多いが、鉄の方が圧倒的にコストが安いため、コストパフォーマンスに優れたバッテリーケースを提案している。

 さらに、JFEスチールが開発したバッテリーモジュールの構成部品がハイブリッド車(HV)に採用される事例も出ており、EVや電動車へのシフトで新たな販路を拡大できている。