【進化する「競技用車いす」】パラリンピック通算メダル獲得数は144個、国内外のパラアスリートをサポートする日本企業の“超絶技巧”

AI要約

オーエックスエンジニアリングは、パラアスリートの信頼を得る競技用車いすのメーカーであり、選手の要望に合わせたカスタマイズが可能である。

競技用車いすの技術は進化しており、カーボンファイバーやマグネシウム合金などの素材が使用され、選手に合わせた細かな調整が行われている。

これまでに同社製品を使用した選手が獲得したパラリンピックのメダル数は1996年のアトランタ大会から通算144個であり、同社は選手の活躍を支えることに誇りを持っている。

【進化する「競技用車いす」】パラリンピック通算メダル獲得数は144個、国内外のパラアスリートをサポートする日本企業の“超絶技巧”

 8月28日に開幕するパリ2024パラリンピックで、パラアスリートの活躍とあわせて注目したいのが、選手の活躍を支える「競技用車いす」だ。選手の要望に応え、パフォーマンスを支えるために、車いすメーカーも技術力を高めている。『パラリンピックと日本人』(小学館新書)の著者でノンフィクションライターの稲泉連氏が、パリ大会でメダルが期待される選手の車いすを製造するメーカーを取材した。

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 千葉県千葉市に本社があるオーエックスエンジニアリングは、パラアスリートから篤い信頼を得る競技用車いすのメーカーだ。昨年引退した車いすテニスの国枝慎吾さん、東京大会で2つの金メダルを獲得した陸上の佐藤友祈選手、スイスのマルセル・フグ選手など、国内外のパラアスリートをサポートしてきた。同社の車いすに乗ってプレーした国枝さんは言う。

「車いすは僕らにとっての“足”です。自分用にカスタマイズされたものは、文字通り血が通っているような感覚になるまで、気持ちを研ぎ澄ませて調整をしていました」

 現在の競技用車いすの技術の進化は目覚ましく、カーボンファイバーやマグネシウム合金など様々な素材が利用されている。製作過程では選手の要望に合わせ、細かな採寸をして図面を引く。

 同社はもともとオートバイの部品製造やエンジン開発をしていた会社でもあり、バイクのレースで培ったノウハウも活かされてきたという。

 26年にわたり同社で車いすを作ってきた小澤徹さんは話す。

「例えば陸上競技ではメインフレームに使われているカーボンが地面からの振動を吸収することで、選手の負担が格段に減りました。また、アルミニウム合金製のフレームは、選手の体格、身体状況などに合わせ、ミリ単位で製造、調整します」

 同社の製品を使用した選手がこれまでに獲得したパラリンピックでのメダル数は、1996年のアトランタ大会から数えて通算144個。

「私たちが手がける車いすをお選びいただいた選手が世界を舞台に活躍することは、この仕事の大きなやりがいです」と語る小澤さんは、パリ大会にも選手団に同行してサポートする予定だ。

取材・文/稲泉連(いないずみ・れん)

1979年、東京都生まれ。2005年、『ぼくもいくさに征くのだけれど-竹内浩三の詩と死-』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『復興の書店』『豊田章男が愛したテストドライバー』『日本人宇宙飛行士』『サーカスの子』など。1964年の東京パラリンピックについて取材した『パラリンピックと日本人 アナザー1964』が好評発売中。

撮影/藤岡雅樹

※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号