ジャーナリズムをどこまで守ることができるのか? 世界最大級の SSP が考える、健全なエコシステム構築に必要なこと

AI要約

デジタル広告環境におけるMFA(made-for-advertising)問題やプログラマティック広告の健全性について、世界最大級のSSPであるIndex Exchangeのジェシカ・ブレスラフ氏と電通ジャパン・インターナショナルブランズの星貴也CIOが語る。

日本市場においてはプログラマティック広告の予算シェアが低いが、テクノロジーの進化や課題への対応が必要とされている。

MFAサイトの問題と対策、透明性やクオリティの重要性など、健全なプログラマティック広告エコシステム構築に向けた取り組みが求められている。

広告目的で作られたサイト、MFA(made-for-advertising)に広告費が不正に流出することは、広告主はもちろん、パブリッシャーにとっても深刻な問題で、プログラマティック取引を行う際の大きな課題になっている。

世界最大級のSSPであるIndex Exchangeで最高顧客責任者を務めるジェシカ・ブレスラフ氏は、「MFAを完全に排除するためには、パブリッシャー、SSP、DSP、エージェンシーが力を合わせてこの問題に取り組むことが必要だ」と語る。

ジェネレーティブAIの普及により、今後のデジタル広告環境には透明性やクオリティの担保を求める声がより一層強くなることが予想されるが、どうすれば健全なエコシステムを構築できるのか。来日したジェシカ氏、そして5月28日に同社とパートナーシップを発表した電通ジャパン・インターナショナルブランズ(DJIB)の星貴也CIO(最高統合責任者)に、日米におけるプログラマティックバイイングの状況、さらにジェネレーティブAIによる影響なども交え、話を聞いた。

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DIGIDAY編集部(以下、DD):昨今、プログラマティック広告の健全性が著しく低下していることについて、どう感じていますか?

ジェシカ・ブレスラフ氏(以下、ジェシカ):米国ではデジタル広告に関わる多くの人が、透明性やクオリティ担保の必要性を強く感じています。業界全体が非常に大事な局面を迎えているので、Index Exchangeにおいてもさまざまなツールやソリューションを開発してきました。

それらがプログラマティック広告の健全性につながっていくと考えていますが、他方で支払った広告費が実際にどのように使われているのか、きちんとプレミアムなパブリッシャーに届いているのかについて、広告主が把握されることも大事だと考えています。

ジェシカ・ブレスラフ(Jessica Breslav)/Index Exchange最高顧客責任者。2004年よりデジタル広告に携わり、世界的アフィリエイト・マーケティング・ネットワークCommission Junctionで顧客サービスのリーダーを担当。その後、Criteoでは南北アメリカ担当のエグゼクティブ・マネージングディレクターなどの上級職を務め、商品の多角化とサービスソリューションの推進に貢献。現在はIndex Exchangeのグローバルサービスと運営を統括する最高顧客責任者として、メディア企業・広告代理店・チャネルパートナーに、世界水準のソリューションを提供している。

星貴也(以下、星):日本市場においても透明性やクオリティを担保して、投資した金額をきちんと効果的に使うことが重要であることに変わりはありませんが、アドフラウドやMFAなどに関する問題意識は、欧米ほど強くないのが実状です。その理由のひとつは、日本ではマーケティング予算全体に占めるプログラマティック広告の割合が大きくないということです。

DD:日本でプログラマティック広告の予算シェアが小さいのはなぜでしょうか?

星:プログラマティック広告は出したいところにしっかり出るか、届けたいメッセージがきちんと届くかが曖昧だと思われているからです。そのため、日本では出面が担保される予約型広告が好まれる傾向にありました。しかし、テクノロジーがめまぐるしく進化するなかで、今後、広告を効果的に届けていくには、プログラマティック広告を無視するわけにはいきません。

いま欧米で問題になっていることや解決策を踏まえ、プログラマティック広告にはどんなメリットがあって、安全担保のためにどんな手法があるのか、日本の広告業界は理解を深めていく必要があると感じています。

DD:アドフラウドに次ぐプログラマティック広告の問題として、MFAサイトの乱立が大きな課題となっています。ことし3月にはアダリティクス(Adalytics)のレポートにより、ForbesがMFAサイトを運営していたことが明らかになるなど、その問題は深刻化しています。これらについてはどうお考えですか?

ジェシカ:当然のことながら、MFAは積極的に排除していかなければなりません。業界全体で連携を図り、まずは何がスタンダードなのかという基準を設けること。グローバルに活動する協会や団体が今まさにMFAの定義を固め中ですが、基準が明確化すれば、この先の方向性や我々が取るべき施策も自然と見えてくるでしょう。

とはいえ、MFAかどうかはサイトを実際に見れば、すぐにわかります。広告主にとって良いサイトか悪いサイトかが判断基準になるわけですが、広告表示の密度が異常に高かったり、コンテンツそのものが読むに値しないものばかりが掲載されていたりするのがMFAです。そうしたMFAが広告取引の場に存在することを、我々はSSPとして一切許可していません。

星:広告主は一般的にDSPを通じて買い付けをするわけですが、何度もリロードされるサイトや広告が過剰に表示されるMFAに広告が掲載されてしまうと、ブランドイメージの毀損につながりかねません。それはエージェンシーとしても絶対に避けなければならないと考えており、こうした問題に対応するためにはSSPとの連携も不可欠だと考えています。

星 貴也/電通ジャパン・インターナショナルブランズ(DJIB)最高統合責任者。外資系広告代理店を経て、2006年に電通グループに入社。アカウントディレクターとして世界各国と連携をしながら、日本市場における外資系クライアントの戦略から実行までの実務を担当した後、2023年1月より現職。国内外のマーケティング活動や統合コミュニケーションに関する幅広い知識と経験を活かし、DJIBの最高統合責任者として戦略プランニングやソリューション開発、ストラテジー提供を担当する統合ソリューション室を管轄している。