年収320万円で保険料が「6.6万円」高くなる? 負担割合が「不公平すぎる」大問題

AI要約

社会保障制度における医療保険や介護保険の自己負担割合が引き上げられており、所得による負担の不公平さが問題視されている。

後期高齢者医療や介護保険の自己負担割合が変更され、対象者によって3段階の負担区分が設けられる。また、2024、2025年度には保険料が引き上げられることも決定されている。

介護保険では、負担の2割を拡大する方針が示されており、少子化対策の一環として社会保障改革が進められているが、懸念もある。

年収320万円で保険料が「6.6万円」高くなる? 負担割合が「不公平すぎる」大問題

 全世代型社会保障の考えに基づき、医療保険や介護保険における保険料の自己負担割合が引き上げられている。ここで重要なのは、所得の種類によって負担の大きさに不公平さが生じていることで、たとえば金融資産からの所得では負担が軽くなるのだ。この問題は、決して軽視してはならない問題だ。

 後期高齢者医療において、これまでの自己負担割合は原則1割、所得の多い世帯で3割だった。これが改正され、2022年10月から、1割負担だった人のうち所得が一定以上ある人について、自己負担割合が2割となった。変更の対象者は、後期高齢者医療制度の被保険者の約20%に上る。所得の多い世帯は引き続き3割なので、結局3段階の区分になった。

 さらに2023年5月に健康保険制度が改正された。後期高齢者医療制度の年間保険料が、2024、2025年度の2年間で、全体平均で年約5,200円引き上げられる。

 介護保険では、65歳以上の介護保険料が2024年度から引き上げられた。これまでは所得に応じて9段階に分かれていた国の標準区分を変更し、13段階に増やした。これまで最も高い所得区分で、基準額の1.7倍だったのが、最大2.4倍に引き上げられた。

 今後の焦点になるのが、介護保険の利用料を2割負担する人の対象拡大だ。政府は2024年度に、介護サービス利用費における2割自己負担の対象者を広げる方針を示し、少子化対策の財源確保に向けた社会保障改革の計画「改革工程」の素案に盛り込んだ。改革工程は、2023年12月5日の経済財政諮問会議で示された。

 しかし強い反発を受け、引き続き検討が行われることになっている。政府は新たな期限として、「2027年度の前」までに結論を出すとしているが、合意形成がどこまで進むか、先行きは見通せない。

 少子化によって現役世代が減る中で、高齢者に一定の負担を求めることは社会保障制度を維持するために必要なことだ。これまでの「給付は高齢者、負担は現役世代」という仕組みを改め、「年齢にかかわらず経済力に応じた負担」を徹底する必要がある。そして、現役世代の負担軽減を目指す。これが、「全世代型社会保障」の考えだ。

 政府は、2019年9月に全世代型社会保障検討会議を設置し、社会保障全般にわたる持続可能な改革を検討してきた。会議は、2019年12月に第1回目の中間報告を行った。また、2020年6月に第2回目の中間報告を行い、2020年12月に全世代型社会保障改革の方針を閣議決定した。

 後期高齢者の本人負担引き上げは、2019年12月に政府の全世代型社会保障検討会議がまとめた中間報告で打ち出された。

 社会保障制度を維持していくためには、高齢者にも経済力に見合った負担をしてもらう必要があるとの考えだ。2020年12月に公表された最終報告でも柱の1つに据えられた。