アメリカついに利下げ“歴史的転換点”へ どうする日銀?追加利上げ判断は

AI要約

アメリカの金融政策が変化する転換点として、FRBのパウエル議長が9月の利下げを予告した。

過去の金利上昇によりインフレの抑制を図ってきたが、現在の物価上昇は2%台に安定し、雇用への懸念が高まっている。

パウエル議長は雇用市場の意識を強調し、9月の利下げの可能性により株式市場や外国為替市場に影響を与えた。

アメリカついに利下げ“歴史的転換点”へ どうする日銀?追加利上げ判断は

アメリカの金融政策が転換点を迎えることになった。FRBのパウエル議長は23日、「9月の利下げ」を事実上予告した。

「政策を調整すべき時が来た」。主な中央銀行のトップや経済学者が集う「ジャクソンホール会議」で講演したパウエル議長は、こう明言した。

記録的なインフレの抑制を最重要課題として、利上げが続けられた結果、アメリカの政策金利は5.25%から5.5%と、2001年以来の高い水準となっている。企業や家計の旺盛な投資・消費意欲を鈍らせるため、金融引き締めを通じて、経済全体の需要を下押しして物価上昇にブレーキをかける狙いだったが、2年前に7%台だった消費者物価指数は、7月は2.9%と、3年半ぶりの2%台にまで下がり、落ち着きを見せている。

パウエル氏は「持続的に(物価目標の)2%に戻る道筋をたどっているという確信を深めている」と述べ、抑え込みを続けてきた物価の安定に自信を示した。

一方で、強調したのが、雇用への配慮だ。「雇用の下振れリスクは高まっている」として、労働市場について「さらなる冷え込みを求めることも歓迎することもない」と述べるとともに、「力強い労働市場を支えるため、できることはすべて行う」と強調した。

過熱を続けてきた企業の求人意欲に鈍化傾向がみられるなか、最近の経済指標では、雇用の弱さが浮き彫りになってきている。7月の失業率は、横ばいを予想していた市場の読みに反して、約3年ぶりの高水準となる4.3%へと悪化したほか、この1年間の就業者数の伸びは、公表されていた数字より28%少なかった可能性が出てきた。

FRBには、「物価の安定」と「雇用の最大化」というふたつの使命が法律で定められているが、パウエル議長の発言は、インフレの封じ込めから、雇用の目配りへと、政策の重心を移していく姿勢を鮮明にしたものだといえる。

9月の利下げが強く示唆されたことで、23日のニューヨーク株式市場では、景気や企業業績にプラスに働くという見方が広がり、幅広い銘柄に買い注文が広がった。ダウ平均株価は一時、500ドル近く値上がりし、7月につけた終値としての史上最高値を超える場面もみられた。

外国為替市場では、日米の金利差の縮小が意識され、ドルを売って円を買う動きが進んで、一時1ドル=144円台前半と、講演前後で2円ほど円高に振れた。

市場の関心は、利下げされる「幅」に移っている。通常の倍となる0.5%の利下げを見込む観測も広がるなか、金融政策を決める9月中旬のFOMC=連邦公開市場委員会までに公表される8月の雇用統計や消費者物価指数が判断材料になる。