新たな働き方「スポットワーク」のインパクト シニアや育児世代、ビジネスパーソンも #くらしと経済
スマホの手続き一つで完結する手軽な最短1時間から働けるスポットワークが注目されている。大手企業も参入し、市場の注目度が高まっている。
スポットワークを活用する田中さんは、自分のスケジュールに合わせて働き、社会とのつながりを感じている。退職後の暇な時間を有効活用し、多様な業種で働いてきた。
スマホアプリを通じてすべての手続きが簡単に完結し、報酬も即日振り込まれる利便性が利点。スポットワークは働き方改革の一環として注目を集めている。
「スポットワーク」という働き方に注目が集まっている。耳慣れない言葉だが、わかりやすく言えば、「最短1時間から働ける単発バイト」だ。従来のアルバイトと異なり、スマホの手続き一つで完結する手軽さが特徴で、今では大手企業も相次いで参入し、市場の注目度は高まる一方だ。スポットワークは新しい働き方として、私たちの暮らしにどのような変化をもたらすのか。また社会にどのようなインパクトを与えるのだろうか。(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「清掃お願いします!」。ビジネスパーソンでにぎわう昼間の新橋、夜の来客に備えて居酒屋で開店準備に当たっている田中正則さん、61歳。慣れた手つきでテーブル整頓を行い、窓拭きなどの清掃業務をこなしていく。
田中さんはスポットワークでこの居酒屋にやってきた。店のスタッフとは初対面だが、この日は開店前の仕込みの数時間のみの勤務。業務開始や退勤の手続きは店舗のQRコードを読み込むだけで完了だ。最短で数分後には報酬が振り込まれる。
「これまで金融畑で働いてきて、他の業界や業種を知ることはまったくなかった。初めてスポットワークで倉庫で働いたとき、『こうやって日本の物流は成り立ってるんだ』と知って感動したんですよ。それに、勤務後にコメントが届くんですが『また来てください』と丁寧なコメントをもらうとすごくモチベーションになるんですよね」
金融業界を56歳で退職し、悠々自適な老後を送ろうと思っていた矢先、コロナ禍が襲った。外に出ることもできず、仕事もない。社会との接点を急速に失い、自宅でくすぶっていた田中さんにとって、スポットワークは「社会とつながる窓口のようなものです。最短1時間から働ける“究極の働き方改革”かもしれませんね」と言う。
田中さんのように、スキマ時間で自分のスケジュールに合わせた働き方は「スポットワーク」と呼ばれ、新たな働き方として注目が集まっている。特徴は、文字通り「スポット」で働けることだ。面接や履歴書の提出も不要。すべての手続きがスマホで完結する手軽さに加え、給料が即日入金される利便性も相まって、人気を博している。田中さんは5年間で1000回以上、単発アルバイトの仲介アプリを利用して働いてきた。1日4~6時間の勤務時間で週5日、これまで働いた業種も居酒屋のホールから倉庫での集荷作業まで幅広い。