スキマバイトアプリ「タイミー」上場でサイバーエージェント藤田晋氏は71億円を手に(小林佳樹)
スキマバイトアプリ「タイミー」が東京証券取引所に上場し、初値は公開価格を上回る1850円となった。
創業者の小川嶺氏は、立教大学出身でタイミーのサービスは履歴書や面接なしで仕事探しやマッチングを行う。
「タイミー」はスポットワーク市場を開拓し、競合他社も参入するなか、さらなる市場拡大が期待される。
【経済ニュースの核心】
スキマバイトアプリを運営する「タイミー」が東京証券取引所(グロース市場)に上場した。初値は公開価格の1株あたり1450円を上回る1850円。2018年8月のサービス開始にもかかわらず、「ユニコーン企業」となった。
「タイミー」には、およそ770万人が働き手として登録している。職場は物流や飲食、小売りを中心に全国でおよそ25万に上る。
創業した小川嶺氏は1997年生まれ。立教大学経営学部卒。
高校生の頃から起業に関心を持ち、リクルートやサイバーエージェントなどでインターンを経験。18年8月からスキマバイトアプリ「タイミー」のサービスを開始した。
「立教大学生だった20歳のときにファッション業を起業したが、事業存続に悩み自ら畳んだ。その後、残った借金30万円の返済のため、アルバイトにいそしむ中で、タイミーの事業を発案した」(小川氏)
タイミーのビジネスモデルは、仕事探しからマッチングまでが履歴書や面接なしで完結する。
給与はバイトした日のうちに振り込まれる。クライアントの事業者は、バイトに出す報酬の3割に当たる額を、サービス利用料としてタイミーに支払う仕組みだ。
リクルートのインターン経験もある小川氏は、「人手が余っていた時代に江副(浩正)さんが、学生起業家としてリクルートをつくった。人手不足というパラダイムシフトが起きた令和にタイミーが生まれた。リクルートの求人マッチングでなく、タイミーはオンデマンドでHR(人材領域)を制覇したい」と意気込む。
また、サイバーエージェントの藤田晋氏は、創業間もないタイミーに出資した株主であり、メンター(助言役)でもある。
上場について「藤田さんからは『自分の見る目は間違ってなかった』と喜んでいただいた」(小川氏)という。
藤田氏が経営するサイバーエージェントはタイミーの株式384万株を保有(24年6月現在)しており、上場初値で計算して71億円を手にしたことになる。
■「スポットワーク市場」はさらに拡大
タイミーが開拓した、隙間時間を活用して働く「スポットワーク市場」はさらなる拡大が見込まれる。今年3月にフリマアプリを展開するメルカリがスポットワークアプリ「メルカリ ハロ」を開始。今秋には人材大手のリクルートも市場に参入する見込みだ。
ベンチャーのタイミーにとっては強力なライバル出現となるが、「メルカリCEOの山田進太郎氏は尊敬する起業家の一人で、一緒にサッカーをする仲」(小川氏)と意に介さないが……。
(小林佳樹/金融ジャーナリスト)