中電、小規模電力網を試験運用 30年の事業化目指す 災害時自立運転など検証

AI要約

中部電力は2024年度中に、技術開発本部でマイクログリッドの試験運用を始める。災害時に限られた地域に電力を供給するシステムで、自治体への提案も視野に入れている。

技術開発本部では、太陽光パネルや蓄電池などの設備を導入し、マイクログリッドの運用準備を進めている。24年度には長野県飯田市での試験運用も予定されている。

電力会社としての強みを活かし、マイクログリッドのソフトウェアプラットフォームの提供を目指す中部電力は、災害時の電力供給に寄与する意欲を示している。

中電、小規模電力網を試験運用 30年の事業化目指す 災害時自立運転など検証

 中部電力は2024年度中に、技術開発本部(名古屋市緑区大高町)でマイクログリッド(小規模電力網)の試験運用を始める。敷地内に試験用の蓄電池設備などを導入し、システムの予測・制御技術などを検証する。マイクログリッドは、災害などの大規模停電時に電力会社の系統から切り離し、限られた地域に電力を供給するシステム。蓄電設備や再生可能エネルギーなどを活用して特定地域内の電力を自給する仕組みで、中電は30年の事業化を目指している。技術の検証・研究結果を踏まえ、自治体などへ提案する。

 技術開発本部では、模擬的なマイクログリッドの運用に向けた準備を22年度から進めてきた。太陽光パネルを模した電源装置や住宅での電力消費を想定した模擬負荷装置、配電設備などを順次導入してきた。試験用の蓄電池設備を11月末ごろに導入し、試験運用に入る予定だ。

 具体的には、長野県飯田市で24年度に試験運用開始予定の「飯田マイクログリッド」の検証を並行するほか、大規模災害発生時の停電などを想定した、非常時・自立運転時の電力システムの挙動検証を実施。産学連携による新型機器や、新しい配電・マイクログリッドの運用制御の研究なども行う。また、クラウド上でデータの取得や予測などを行うエネルギーマネジメントシステム(EMS)の設計・開発も進める。

 台風や豪雨、地震など近年に頻発する大規模な自然災害の発生により、主要な電力系統が大きな被害に見舞われた場合の電力利用についての備えが求められている。中電は、電力供給面での災害時のレジリエンス(復元力)向上に寄与する観点などから、実際の設備を使ったマイクログリッドの試験場の構築が必要と判断。遠隔でもシステムを管理しやすいクラウド上で運用できるEMSの技術開発を進める。

 技術開発本部電力技術研究所電力品質グループ長の中地芳紀氏は「電力需給の制御技術など電力会社としての強みに加え、マイクログリッドのソフトウエアプラットフォームを提供できるようにしていきたい」と話している。