今シーズンのサンマは違う? 初物増で安値、「一番サンマ」は過去最高値

AI要約

今年のサンマは不漁対策の成果もあり、豊洲市場に豊富に入荷。値段も昨年より大幅に下がり、一部では特売も行われている。

魚体は小ぶりだが、改善の兆しも見られる。漁期の予想は低水準だが、今年は序盤から一定の水揚げがあったことで漁が上向く可能性もある。

一方で、初物のサンマでは過去最高値が付くなど突出した取引も行われ、古き良きサンマの食文化を大切にする動きも見られる。

今シーズンのサンマは違う? 初物増で安値、「一番サンマ」は過去最高値

 東京・豊洲市場(江東区)に8月19日朝、サンマが今シーズン初入荷した。深刻な不漁が続くサンマだが、北海道で水揚げがある程度まとまったことから、近年では珍しく豊富に入荷。昨年の初荷より全体的に大幅な安値となった。一方で、一部の大きなサイズには1キロ当たり50万円、1匹では7万円を超える過去最高値が付いた。(時事通信水産部 岡畠俊典)

◆1匹200円前後で特売も

 豊洲市場に19日、北海道根室市の花咲港などで16~17日に水揚げされたサンマの一部、約42トンが入荷した。わずか約500キロだった昨年8月21日の初荷に比べて大幅に増加した。

 今年は不漁対策として、例年盆すぎの8月20日に解禁される大型船の出漁を、10日早める措置が取られた。昨年8月中旬の北海道での初水揚げは約1.6トンにとどまったが、今年は2日間で600トンを超えた。漁序盤としては「ここ数年であまり見ない、まとまった量が取れた」(豊洲市場関係者)という。

 初物のサンマは、豊洲市場にも多く入荷した。1匹約110グラムサイズが中心で、卸値は1キロ当たり800~1200円。昨年の初荷では、近いサイズが同1万円以上と高騰していたため、大きく値を下げた。都内でも、近年はこの時期にスーパーなどで並んでいなかった生サンマが店頭に姿を現し、1匹200円前後で特売される光景もあった。

 魚体は今年も小ぶりが目立つが、わずかながら改善の兆しも見られた。昨年の初荷は1匹70グラム余りが中心サイズだったが、今年は同110グラム前後。豊洲市場の卸会社関係者は「小型に変わりないが、漁場で餌を豊富に食べた形跡もみられるので、これからさらに太って脂が乗ってくるのでは」と期待を寄せる。

◆「一番サンマ」1匹7万円

 取引価格が大幅安となった一方、突出した値段が付いた初物のサンマもあった。豊洲市場に入荷した中で最大の1匹約140グラムが詰められた合計1キロの魚箱(7匹入り)。1箱だけで、卸値は1キロ当たり50万円、1匹換算で約7万1400円の過去最高値を記録した。昨年の初荷でも、最大サイズだった同約130グラムを集めた魚箱に同20万円の最高値が付いたが、今年は2.5倍となった。

 取り扱ったのは、豊洲の卸会社「中央魚類」の小松慎一郎さん。小松さんは、初荷で最も大きいサンマを、縁起を担いで「一番サンマ」と名付け、大手仲卸「山治」の山崎康弘社長に超高値で販売した。昨年も小松さんと山崎社長が協力して購入しており、今回も「今年の大漁を祈願するとともに、漁師や出荷する皆さんらに感謝の気持ちを伝えたかった」と、2人の思いが合致した。異例のご祝儀相場に一部では批判的な声もあるが、小松さんは「古き良きサンマの食文化をなくさないためにも盛り上げていきたい」と前向きだ。

 豊洲市場の最高値は、札幌市中央卸売市場で17日行われたサンマの初競りで付いた最高額(同40万円)を超えた。1キロ単価だけでみると、今年1月のマグロ初競りで落札された大間産「一番マグロ」(1キロ当たり48万円)も上回った。山治が入手した超高級サンマは、米国のすし店などで使われたという。

 国の研究機関は、漁期を通じた日本近海へのサンマ来遊について、今年も昨年に続き低水準になると予想する。漁場も、日本から離れた公海を中心に形成されるとみられている。一方、不漁が続く近年の中でも、今年は序盤に一定の水揚げがあったことなどから、「漁が上向いてほしい」(豊洲関係者)と期待が高まっている。