ロシア領侵攻でゼレンスキーは「勝ち馬」になれるか

AI要約

2024年8月6日から始まったウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への突然の越境攻撃から2週間が過ぎた。ウクライナ軍は約1250平方キロメートルの地域と92の集落を制圧し、占領地を拡大している。ゼレンスキー大統領は達成感を口にし、失敗に終わった以前の反攻作戦との対比を自負している。

今回の越境作戦は事前にアメリカにも伏せており、自らの手で準備した完全な秘密作戦である。これにより、ウクライナはアメリカからの横やりを避けつつ、成功を収めている。

ウクライナ軍の順調な進撃は、ゼレンスキー政権に自信を持たせ、プーチン政権に対し対抗する術はないとの自信を見せている。

ロシア領侵攻でゼレンスキーは「勝ち馬」になれるか

2024年8月6日から始まったウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への突然の越境攻撃から2週間が過ぎた。2024年8月17日付「ウクライナ軍がロシア領内反攻に成功した理由」で筆者は、越境攻撃がウクライナ側の計画通りに順調にスタートしたことを報告した。

 その後、戦況はどうなっているのか。また、ゼレンスキー政権とプーチン政権の動きはどうなのか。今後、情勢を見守るうえでのポイントは何かなど、最新の情報をまとめてみた。

■越境作戦の成果に手応え

 今回の越境作戦の順調な滑り出しを受け、ウクライナは今、達成感にあふれかえっている。それもそうだろう。今後の戦争の帰趨を懸け、アメリカなど西側パートナー国に対しても内密に準備し、満を持して始めた越境作戦が当初の狙い通りに戦果を出しつつあるからだ。

 本稿執筆段階では、ウクライナ軍はクルスク州への越境攻撃により約1250平方キロメートルの地域と計92の集落を制圧したと主張している。さらに占領地を拡大している。

 これに安堵したのだろう。作戦に関してこれまで口数が少なかったゼレンスキー大統領も、達成感を初めて饒舌に語り始めた。2024年8月19日、政府主要幹部を集めた演説でこう自賛している。

 「われわれが完全に準備した作戦を実行すれば、ウクライナ内の占領地だけでなく、ロシア領内であっても、プーチンには対抗できる術はない」

 「完全に準備した作戦」。ゼレンスキー氏の頭にあったのは、世界に対し事前に開始を公言しながら結局、準備不足から失敗に終わった2023年夏の第1次反攻作戦の苦い記憶だろう。

 当時、この失敗でウクライナ軍の作戦遂行能力に国際的に疑問符が付いた。ウクライナからすればあの時、アメリカから「早く反攻を始めろ」と言われながら、バイデン政権から必要な武器支援を十分得られなかったという悔悟の記憶がある。

 それに比べ、今回は自らの手で完全に準備した作戦だという自負が滲む。アメリカからの横やりを避けて、自分の思い通り作戦を組むという強い思いから、事前に作戦計画をアメリカ政府にはまったく伝えなかった。ゼレンスキー政権の中でもほんの一握りの最高幹部しか知らない完全な秘密作戦だった。