Amazonの迅速配送実現した物流改革 3つの要素とは

AI要約

アマゾンが世界中で50億個以上の商品を当日または翌日に配達する実績を達成した。

アマゾンの物流改革により、当日配達拠点の拡大や地域ネットワークの地域化が進められ、配送時間が短縮された。

アマゾンはAIを活用して地域別需要を予測し、在庫調整や物流業務を効率化している。

 米アマゾン・ドット・コムがこのほど公表した物流業務実績リポートによると、同社は2024年から同年7月末までに世界中で50億個以上の商品を当日または翌日に配達した。これは前年比30%超の増加であり、これまでで最速の配送実績だという。同社は米国をはじめとする市場で、物流の効率化と迅速化を進めており、今後も一層の時間短縮と品ぞろえの拡大を目指すようだ。

■ 米でPrime対象3億点、配送速度は2倍速く

 アマゾンが有料会員プログラム「Amazon Prime」を開始したのは2005年だった。同プログラムの特典の1つとして、購入商品の配達料を無料にしている。05年当時、米国ではその対象商品が100万点だった。だが、今では3億点以上に上っている。

 人気商品は、数千万点が当日・翌日の無料配送の対象で、Prime開始当初と比較して、選択できる商品数が20倍に拡大、配送速度は2倍速くなった。

■ 物流改革、3つの要素

 これらを実現できた背景には同社の物流改革がある。これは、(1)当日配達拠点(セイムデーサイト)の拡大、(2)物流ネットワークの地域化(リージョナリゼーション)、(3)AI(人工知能)活用による地域別需要予測、の3つによってもたらされた。

 アマゾンは米国で「セイムデーサイト(当日配達拠点)」と呼ぶ倉庫のネットワークを拡大している。その1施設当たりの大きさは、アマゾンの一般的なフルフィルメントセンター(発送センター)の数分の1程度。主に大都市圏近くにあり、EC(電子商取引)サイトで人気のある数百万点の商品を常時置いている。一部の商品は注文から数時間で配達している。

 アマゾンは、フルフィルメントセンターやソートセンター(仕分けセンター)、デリバリーステーション(宅配ステーション)といった物流拠点を連携させて商品を配達している。だが、このセイムデーサイトは、これらの機能を1つに集約した小規模拠点だ。アマゾンによれば、ここでは、注文からわずか数分で商品をピッキング、梱包するなどして、迅速配送を実現している。現在、これらの拠点を活用して、米国の120以上の都市圏で当日配送サービスを提供している。

■ 物流の地域化でラストマイル配送効率化

 アマゾンはかつて米国内の配送網を「ハブ・アンド・スポーク」と呼ばれる、集中型の全国モデルで運営していた。顧客が望む商品は例えコストがかかろうと全米規模で移動していた。だがパンデミック(新型コロナウイルスの世界的大流行)時にこの方式を改め、「リージョナリゼーション(地域化)」を進めた。全米の自社物流網を8つに分割し、地域それぞれで自己完結できるオペレーションに切り替えた。商品は顧客に最も近い倉庫から出荷し、特別な場合を除き各地域間を移動しない。

 この取り組みは成功した。「ラストマイル」と呼ばれる、倉庫から顧客宅までの商品移動距離が縮小し配送時間の短縮につながった。アマゾンによれば24年上半期における、米国内のラストマイル輸送距離は前年同期比で約10%短くなった。

■ 地域で異なる需要を予測、AI活用

 ここで重要になるのが、地域別の在庫調整だ。そのためにはデータとパターンを分析し、商品がどこで需要があるかを予測する必要がある。これにAIを活用する。同社は機械学習(マシンラーニング)の改善を図っており、どの倉庫にどれだけの在庫を配置するかといった調達業務を効率化している。あらかじめ適所に在庫を移動しておけば、注文から配達までの時間が短縮され、かつコストも抑えられる。

 アマゾンによれば、この取り組みは順調に進んでいる。24年上半期、米国では1つの梱包(こんぽう)箱に入れる平均商品数が増えた。これに伴い配達回数を減らすことに成功した。

 アマゾンによれば、同社の顧客は豊富な品ぞろえや迅速な配送を求めている。同社は、顧客の要望に応えるため、今後も国内外で配送速度を加速させる。そのための革新と投資を引き続き行うとしている。