宅配便ヤマトが逆張り値下げ「荷物争奪戦」が過熱、「2024年問題」に直面するタイミングでなぜ?

AI要約

大手物流企業が顧客を大胆な値下げで奪われる中、物流業界の競争が激化していることが明らかになっている。

ヤマト運輸の価格攻勢により、佐川急便を擁するSGホールディングスは荷物の取り扱い状況が厳しく、値下げ競争の影響を受けている。

大手物流企業の戦略と数字を比較すると、宅急便の個数は増加傾向にあるものの、単価が下がる状況が続き、値下げによる影響が顕著に表れている。

宅配便ヤマトが逆張り値下げ「荷物争奪戦」が過熱、「2024年問題」に直面するタイミングでなぜ?

 「大手物流の値下げの影響で顧客を1社失った。かなりの値下げだから、収益的には厳しいのでは」

 ある物流企業首脳は、こう明かす。この会社は大手よりも価格を低めに設定し、効率を重視する運営で定評がある。それでも顧客を奪われたという。

 価格攻勢をかけているのは、宅配便の王者・ヤマト運輸だ。ヤマトはここ最近、精力的に法人顧客の開拓を進めている。法人客の獲得にはコストを下げる提案も重要になるため、大胆な割引を適用しているようだ。

 物流業界は現在、荷物量の少ない状態が続いている。物価上昇に賃上げが追い付かずに節約志向が強まる中、消費は停滞し、荷物量が減っている。頼みのEC(ネット通販)も成長が鈍化し、苦しい状況だ。そんな中、最大手が価格戦略で荷物争奪戦に乗り出している。

■佐川の6月は8%超マイナスの衝撃

 各社の荷物の取り扱い状況は、毎月発表される「月次実績」で把握できる。ヤマトの場合、今2024年度の宅急便の月次の取扱実績はプラス基調で推移している(図表)。厳しい市場環境下でも、着実に荷物を獲得していることが見て取れる。

 一方、ライバルの佐川急便を擁するSGホールディングス(HD)は厳しい。特に今年6月は前年同月比8.1%減まで落ち込んだ。実績を開示している2018年度までさかのぼっても、単月ベースでは最大級の減少幅となった。これはヤマトの値下げ影響にほかならない。

 7月に入り同1%増へ回復したが、これは荷物量の多い平日が昨年より2日多かったためで、実質的にマイナス基調となっている。SGHDは2024年度の宅配便個数の通期見通しを13.8億個から13.6億個に引き下げた。

 SGHDは実質賃金の低下が続いていること、EC需要が旺盛ではないこと、競争激化などを荷物減少の主な要因と分析する。そんな中でも「適正な運賃を収受する」という方針は変えず、単価を落としてまで荷物を獲得することはしなかった。そこにヤマトの攻勢が重なったわけだ。今後は営業活動を再強化する方針だ。

 ヤマトの戦略は、数字を見れば明らかだ。4~6月期の宅急便の個数は前年同期比2%増の4億5124万個と健闘したが、単価は706円と同7円下がった。大口法人の取扱数量が6.9%増となり、単価が2.1%下落したことが響いている。