「2024年問題」規制強化から4ヵ月…それでもトラックドライバーの「過労死は減らない」深刻な理由

AI要約

運送業の時間外労働規制が強化され、物流業界が影響を受けている状況。

労災申請件数の増加や残業時間規制の影響により、過重労働の問題が浮き彫りになっている。

「働き方改革」の流れの中で、過重労働による労災が増加しており、健康を損ねるサービスの在り方が問われている。

「2024年問題」規制強化から4ヵ月…それでもトラックドライバーの「過労死は減らない」深刻な理由

トラックドライバーの残業時間規制が強化されてから4カ月が過ぎた。

2024年4月1日から運送業の時間外労働の上限が年間960時間に制限され、物流の現場ではモノが運べなくなる「物流の2024年問題」が騒がれている。だが従来の「便利で早く確実」に荷物が届く日本の物流体制は、ドライバーが実質青天井で残業する緩い労働規制の下で成り立っていた。一方で、毎年、脳や心臓疾患などで死亡する「過労死」が多発。ドライバーの過重労働でそうした便利さが保たれてきたとも言える。では、労働規制の強化でそうした「犠牲」は解消されていくのだろうか。

厚生労働省は毎年、過重な仕事が原因で発症した「脳・心臓疾患」や、仕事による強いストレスが原因で発病した「精神障害」について、労災申請された件数と、そのうち「業務上疾病」と認定して、労災保険金の給付を決定した支給決定件数などを公表している。

最新の2023年度のデータでは、「精神障害」での労災申請が3675件と前年度の2683件から急増、「脳・心臓疾患」での労災申請も1023件と前年度より220件も増えた。精神障害による申請件数は2007年度に「脳・心臓疾患」を上回って以降、急ピッチで増え続けている一方、「脳・心臓疾患」での申請は2019年度の936件をピークに減少傾向にあったが、2022年度から再び増加、遂に初めて1000件を超えた。

2019年度から順次実施されている「働き方改革関連法」によって、残業時間の上限規制が強められた。残業時間の上限は月45時間、年360時間が原則だが、労使合意がある場合でも、年720時間を超えることが禁じられ、月に100時間未満とすることも決まった。大企業は2019年度から、中小企業も2020年度から実施されている。

ところが運送業の場合、激変緩和措置として5年間猶予されてきただけでなく、2024年4月から始まった規制でも、残業時間の上限は年960時間になっている。トラックドライバーの仕事が他の仕事に比べて楽だから残業上限が緩いわけでは、もちろん、ない。他と同じ720時間に制限した場合、物流業界が「回らない」からに他ならない。

だが、こうした過重労働の「ツケ」は、前出の労災申請の数字にはっきりと表れている。「脳・心臓疾患」での労災申請件数も、支給決定件数も、「道路貨物運送業」が業種別で最も多いのだ。

2023年度の場合、「道路貨物運送業」の申請件数は171件、支給決定件数は66件で、2位の申請件数93件(「その他の事業サービス業」)、支給決定件数18件(「飲食業」)を大きく引き離してダントツなのである。この状況は業種別の件数公表が始まった2009年度以降、まったく変わっていない。

特に新型コロナが完全に明けて経済活動が活発化した2023年度に、申請件数が171件と前年度の133件から急増。支給決定件数も66件と前の年度の50件から大幅に増えている。世の中で「働き方改革」が大きな関心事となり、残業規制が強化される流れの中で、過重労働による労災がむしろ増えているのである。働き手が健康を損うことが常態化する中で成り立っているサービスとはいったい何なのだろうか。