埼玉県さいたま市が「さいコイン」導入 デジタル地域通貨の“300億円流出”問題を防げるか

AI要約

さいたま市がデジタル地域通貨「さいコイン」の発行を開始し、地域活性化に貢献する取り組みが始まった。

市外での消費額や手数料流出を解消するために、特典や低手数料での利用を促進している。

利用者にはポイント付与や行政サービスを提供し、地域の活性化を図る方針で運営が進められている。

埼玉県さいたま市が「さいコイン」導入 デジタル地域通貨の“300億円流出”問題を防げるか

 お金の「流出」を防ぎ、地域活性化へ貢献できるのか――。

 7月31日、埼玉県さいたま市が全国の政令指定都市として初めて、デジタル地域通貨「さいコイン」の発行をスタートした。

 仕組みはこうだ。さいたま市と地元企業などが出資して、事業主体となる地域商社「つなぐ」を設立し、スマートフォン用アプリを開発。利用者はアプリをダウンロードして、銀行口座やクレジットカードからお金をチャージすれば、市内の加盟店でQRコードを示して使える。利用は市外在住者も可能だ。

 ペイペイや楽天ペイなどと同様だが、実は、この事業のスタートには「お金の流出」の問題がある。

 クレジットカードにせよ、QRコードにせよ、キャッシュレス決済を利用する店舗は、決済事業者に数%の手数料を支払っている。

 昨年、さいたま市がデジタル地域通貨発行に当たって調査すると、多くは東京を本社とする決済事業者に、1年間で300億円が手数料として流出していることが分かった。しかもこの額はクレジットカードだけであり、電子マネーとQRコードを含めれば、その2倍以上の額が流出している可能性がある。

 加えて、さいたま市民が市外で消費する額は1年間で1000億円を超えていることも分かった。多くは、東京をはじめとした市外への通勤・通学時の消費と思われる。

 さいたま市は人口約135万人、市内総生産額は4兆5000億円(名目、18年度)と比較的大きな都市だが、300億円の流出も、1000億円の市外消費も決して見過ごせるほど小さな額ではない。

 独自のデジタル通貨を発行して市内で使ってもらえれば、手数料としての流出も、市外での消費も解消できる――。

 改めてさいたま市に聞いた。

「特典を付けることで利用者は日常の買い物がお得になるメリットがあり、また、市内の店舗等の事業者には、初期費用不要で、他のキャッシュレス決済より手数料を低く、1.8%にすることで負担を軽減します。これにより、市民が市内の店舗でさいコインを使うという、市民のお金が市内で回る仕組みを作り、地域が活性化することを目指します。また中長期的には、手数料収入を何らかの形で還元することを考えています」(地域活性化推進室、以下同)

 もちろん、キャッシュレス決済事業は競合する事業者に勝たなければ普及しない。そこで、さいたま市は利用者に付与する特典を大きくした。

 1つは、初回に限り、1万円以上をチャージすれば2000ポイントが付与されること。予算は4億円であり、先着20万人が恩恵を得られる。またその後は、チャージ金額に対して3%のポイントが付与される。(1ポイント=1円で使用できる)

「ポイント付与に加え、図書館の利用、各種の手続きなど行政サービスを受けることができるのも特典です。今後は、地域のボランティア活動に参加すればポイントを付与するなど、サービスをより充実させて行きたいと考えています」