EVの「大型化」はなぜ環境に悪いのか? しかも都市部の事故リスク「3倍以上」 解決策は日本にあるかもしれない

AI要約

肥満が世界的な問題となっており、それはEV車両にも影響を与えている。

電気自動車(EV)の大型化が環境への悪影響をもたらしている。

解決のためには政策介入や技術革新、消費者行動の変化が必要である。

EVの「大型化」はなぜ環境に悪いのか? しかも都市部の事故リスク「3倍以上」 解決策は日本にあるかもしれない

 世界各国で社会問題化している肥満(obesity)だが、それは人間だけはなくクルマにも及んでいることが指摘されている。世のクルマもまた“肥満”傾向にあるというのである。

 2024年6月に「Nature Energy」で発表された研究で、英オックスフォード大学の地理環境学部教授であるクリスチャン・ブランド氏は

「大型で重量のある電気自動車(EV)車両の生産、販売、使用の増加」

を「モビシティ(mobesity)」と名づけ、早急に解決されなければならない問題であることを指摘している。

 EVへの移行は、気候変動を緩和するための世界的な取り組みの要であるとされ、現在販売されている自動車の14%をEVが占めている。

 しかし最近の傾向として、モビシティ車両の生産と運用への驚くべき移行が見られ、これが炭素排出量削減への思わぬ障害になっているのだ。

 電気スポーツタイプ多目的車(e-SUV)はガソリン車のSUVに比べてエネルギー効率が3倍優れているといわれているが、それでも製造には大幅に多くのリソースが必要でエネルギー消費量も大きいため、環境フットプリントが増加し、電動化による潜在的な利益が損なわれている。

 将来的に世界中の車両が電動化されても、このモビシティの出現と増加によって、世界の気候目標に沿った炭素排出量の削減が実現しない可能性が出てきたのだ。

 2022年には、e-SUVは世界中のEV販売の約35%を占めるまでになり、同時にメーカーは市場に投入する新しい小型モデルを減らしており、小型EVの存在感を薄めている可能性がある。

 より大きなバッテリーとより強力なモーターの需要が高まると、リチウム、コバルト、その他の重要な原材料の需要も高まる。これらの材料の抽出と加工はエネルギーを大量に消費し、環境に負荷をかけるため、皮肉にも

「電動化が解決しようとしている問題」

そのものが悪化する。重量が増加するとタイヤと道路の摩耗が早まり、粒子状物質が増加し、人間の健康と環境の双方にとって有害となる。

 乗用車の大型化はガソリン車のSUVでも見られる世界的トレンドとなっているが、“グリーン輸送”を目指しているはずのEVの大型化は本末転倒の事態を招いているのである。「モビシティ」がもたらす課題に対処するには、

・政策介入

・技術革新、

・消費者行動の変化

を組み合わせた複合的なアプローチが必要であると、ブランド氏は主張している。

 例えば大型車両の生産を抑制し、効率的で低排出の車両を促進する規制と基準を導入することや、重量、サイズ、またはパワーに基づく課税と、CO2排出量に比例した段階的な課税を導入して、小型でエネルギー効率の高いEVの生産と使用を奨励することなどが考えられる。

 また、地方自治体は大型車両の使用を規制または禁止し、

・歩行

・自転車

・公共交通

の利用を促進および投資する必要があり、

・大型EVの環境および経済への悪影響

・小型電気モデルの利点

について消費者を啓発するメディア戦略も必要であるということだ。