【社説】ハーレーに疑惑 販売店いじめは許されぬ

AI要約

ハーレーダビッドソンが販売店に達成困難なノルマを課していた疑いが浮上。

販売店はノルマ達成のために自爆営業に追い込まれ、中古バイク市場にも影響が及ぶ。

HDJの販売店いじめは20年代から激化、公取委の対応が待たれる。

【社説】ハーレーに疑惑 販売店いじめは許されぬ

 販売店への押し売りは取引先いじめであるだけでなく、ブランド価値をも傷つける愚策である。目先の数字を追う経営は改めるべきだ。

 米国の大手二輪車メーカー「ハーレーダビッドソン」の日本法人「ハーレーダビッドソンジャパン(HDJ)」が、販売店に達成困難なノルマを課していた疑いが明らかになった。

 公正取引委員会は独禁法違反(優越的地位の乱用)の疑いで、東京都新宿区のHDJに立ち入り検査した。

 ハーレーは大型バイクの代名詞のような老舗ブランドで根強い人気がある。専売契約を結んだ正規販売店しか販売できない。

 このブランド力を背景に、HDJは実態を無視した過大なノルマを販売店に課し、達成できなければ契約を更新しないと示唆するなどした疑いがあるという。

 事業継続を望む販売店はノルマを受け入れざるを得ず、自らバイクを買って新規登録する「自爆営業」が常態化していたとの指摘もある。販売台数を増やしたいHDJが、立場が弱い販売店にバイクを押し売りした格好だ。

 中古バイクの販売サイトを開くと、走行距離が100キロ未満のハーレーがすぐに見つかる。新車を購入した客がほとんど走行せずに手放すとは考えにくい。販売店が登録したバイクを処分している可能性が高い。

 これらは新車より大幅に安くしなければ売れず、販売店は赤字が避けられない。新車同様の中古車が市場に多く出回れば、中古バイクの相場は下がる。ハーレーのバイクを所有する一般ライダーにも影響が及ぶことになる。

 最近は不人気車種をさばかないと、客が注文したバイクを出荷してもらえないなど、販売店の負担が一層重くなる仕組みに変わったという。

 国内販売の低迷が影響しているのだろう。日本自動車輸入組合によると、ハーレーの新規登録台数は2021年まで8年連続で減少し、11年に60%だった輸入バイク中のシェアは30%台に低下した。

 22年は一転して3割以上伸び、5年ぶりに1万台を突破した。創業120年の23年は「ハー(8)レー(0)」にかけて1万2080台と強気の目標を掲げたが、1万台に届かなかった。ノルマの押し付けに対する販売店の不満が高まった結果とみられる。

 販売店いじめは、HDJの社長が交代した20年以降に激しくなったように見える。公取委の実態解明を待ちたい。

 販売店に対する過大ノルマは、19年にドイツ・BMWの日本法人「ビー・エム・ダブリュー」でも発覚した。

 自社の目標達成のために取引先に無理を強いる経営は許されない。

 経営者は株主、社員、取引先、地域などステークホルダー(利害関係者)全体に目を配るべきだ。自動車業界に限った話ではない。