期待したほど増えないケースも…年金の「繰下げ受給」手取りはいくら?
厚生労働省によると、年金の繰下げ受給を選ぶ人が増加している。
繰下げ受給で年金額を増やす場合、税金や社会保険料の増加にも注意が必要。
年金の手取り額を試算し、繰下げ受給の効果を検証する。
厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金の繰下げ受給を選ぶ人は国民年金、厚生年金ともに増加傾向にあります。
年金の受給額を増やしたい場合、増額した年金を一生涯受け取れる繰下げ受給は有益な選択肢といえます。ただし、年金額が高額になった場合、差し引かれる税金や社会保険料も増える点に注意が必要です。
この記事では、年金の手取り額を試算し、繰下げ受給の効果を検証します。
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年金の繰下げ受給とは老齢基礎年金や老齢厚生年金を65歳から受け取らずに、66歳以降75歳までの間で受給開始時期を遅らせる制度です。
受け取りを遅らせた月数に応じて増額した年金を受け取れます。
年金の繰下げ受給による増額率は、繰下げ1ヵ月あたり0.7%です。最長期間である75歳まで繰下げると、年金額が最大の84%増額されます。
繰下げ受給の場合、増額された年金額は一生涯続くため、長生きするほど有利です。ただし、受け取り開始まで年金収入がないため、貯蓄や就労などによって生活費の目途を立てる必要があります。
また、年金が増額されると税金や社会保険料も増えるため、期待ほど手取りが増えない可能性もあります。
年金をいくらもらえるのか考える場合、支給時に天引きされる税金や社会保険料に注意が必要です。次の章から詳しくみていきましょう。
年金から差し引かれる税金や社会保険料には、以下のようなものがあります。
・所得税
・住民税
・介護保険料
・国民健康保険料または後期高齢者医療保険料
●所得税・住民税
65歳以上で年金受給額が158万円(年額)超の場合、年金から所得税が天引き(源泉徴収)されます。
配偶者控除や扶養控除といった各種控除を受けるには「扶養親族等申告書」を提出する必要があります。
また、65歳以上で前年の年金受給額(年額)が18万円以上の場合、年金から住民税が天引き(特別徴収)されます。
●介護保険料・国民健康保険料または後期高齢者医療保険料
65歳以上で年間の年金受給額が18万円以上の場合、介護保険料と国民健康保険料(75歳未満)または後期高齢者医療保険料(75歳以上)が年金から天引き(特別徴収)されます。
ただし、世帯主でない年金受給者の国民年金保険料は本人から特別徴収されず、世帯主が納付します。
これに対し、後期高齢者医療保険料は被保険者単位で徴収されるため、本人の年金から特別徴収されます。
次の章では、年金の手取り額を試算した結果についてみていきましょう。