「巨大地震」で建物が倒壊する「恐怖の現象」の正体

AI要約

東日本大震災以降、地震による被害が相次いでおり、特に2023年のトルコ・シリア大地震は巨大な被害をもたらした。

日本とトルコの建物の違いや耐震基準について、福和名誉教授の指摘が述べられている。

柱に鉄筋を入れた靱性指向型設計が地震エネルギーを吸収し、建物の全壊を防ぐ可能性が高いとされている。

「巨大地震」で建物が倒壊する「恐怖の現象」の正体

2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。

もはや誰もが大地震から逃れられない時代、11刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。

(※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)

2023年2月に起きたトルコ・シリア大地震のエネルギーは2016年に起きた熊本地震(Mw7.0)の16倍、1995年発生の兵庫県南部地震(Mw6.9)の22倍で、威力のすさまじさを物語る。

マグニチュードは0.2増えるとエネルギーは2倍に、2増えると1000倍になる。地盤は広い範囲で2メートルも動き、地震による地殻変動は約400キロに達したという。

約6万人もの命を奪った世界最大規模の内陸直下の地震は、トルコの住宅やビルを次々に倒壊させ、パンケーキのように折り重なる悲惨な状況を生じさせた。

人口の2割近い約1400万人が住まいを失い、150万人以上がテントでの避難生活を余儀なくされた。20万棟以上もの建物被害が生じた背景には、違法な建築や改築が横行し、耐震基準を満たさない建物も多かったと指摘されている。

では、日本で同じようなことは起きないのか。

名古屋大学の福和伸夫名誉教授(構造一級建築士)は、「柱の強度」に注目する。激しい揺れで建物が倒壊したトルコでは「パンケーキクラッシュ」といわれる壊れ方が相次いだ。強い揺れで柱の強度が失われ、ほぼ垂直に潰れるものだ。

トルコと日本の耐震基準は変わらないものの、福和名誉教授は柱を支える構造が不足しているなど、基準を満たさない建物が多かったトルコと、日本の新しい建物は異なるとみる。

柱に鉄筋を入れて粘る「靱性指向型設計」は建物を変形しやすくすることにより地震エネルギーを吸収する設計手法で強度が高く、逃げる間もなく数秒で全壊する「パンケーキクラッシュ」が起きる可能性は低いという。