トヨタ流「カイゼン」で認証不正の再発防止へ 社内審査官を新設 担当者1割増員も

AI要約

トヨタ自動車が車の量産に必要な型式指定の認証不正に対する再発防止策を国土交通省に提出した。

再発防止策は認証業務を明確化し、内部監査を強化することが柱となっている。

認証不正の影響で生産停止や新車発売の延期が発生し、トヨタは事業の正常化に向けて取り組む必要がある。

トヨタ流「カイゼン」で認証不正の再発防止へ 社内審査官を新設 担当者1割増員も

トヨタ自動車は9日、車の量産に必要な「型式指定」での認証不正を巡り、再発防止策を国土交通省に提出したと発表した。属人的な側面のあった認証業務の作業判断や責任の所在をルールで明確化し、無理な日程や作業の過剰な負担などの異常があった際に立ち止まって改善する仕組みを整備するとともに、認証試験に立ち会う「社内審査官」を新たに設けるなど内部監査を強化する。

同日記者団の取材に応じたトヨタの佐藤恒治社長は、認証不正について「経営と現場の両軸で、大変多くの課題があった。再発防止の先頭に立って全社一丸で取り組んでいく」と述べた。国交省は7月31日、同社に抜本的な改善を命じる「是正命令」を出し、1カ月以内に再発防止策を報告するよう求めていた。

再発防止策は、作業の異常を見つけやすくし、問題があった際にすぐに業務を止めて修正するトヨタ生産方式の「カイゼン」手法を認証業務に導入・徹底することが柱だ。そのため「認証業務規程」作成の統一ルールを策定し、規程間の齟齬や作業判断の現場任せを防止する。

また、経営層の最高技術責任者やグローバル最高品質責任者、新車開発責任者らが認証工程に関与する役割と権限を改めて明確化。開発の進捗や認証への影響も指標化するなど、業務の運営体制を再構築する。

さらに、認証試験の結果や技術的な判断の根拠を適切に保管する仕組みを整備する。今回の認証不正問題では、トヨタが社内調査で把握できずに国交省の調査で新たな不正が見つかっており、これを踏まえた対策だ。佐藤氏は「エビデンス(試験結果の根拠)が第三者からみて分かりやすい形で残っているのか、体系的に残せているのかという点で管理体制が十分な状態ではなかった」とした。

一方、佐藤氏は「新規認証取得のプロジェクトに対しては出血を止めないといけない」とし、認証を直接担当する人員を現状の400人から約1割増員するなど、認証業務の余力づくりへ短期的な対策を実施する考えも明らかにした。

認証不正を巡っては「ヤリスクロス」など3車種の生産停止で3万台の影響があったほか、新規認証取得の停滞で新型車の「クラウンエステート」の発売を延期するなど部品取引先や販売店の業務に支障が出ており、トヨタには再発防止の速やかな実行による事業の正常化が求められる。(池田昇)