「えっ…」なぜスーツケースで育てた野菜を食材に!? どんな野菜が穫れる? 話題沸騰の「eco庭」プロジェクトとは
「庭のホテル」では、スーツケースからにょきにょき飛びたす野菜を育てており、ホテルのコンセプトに合わせて再利用を実施している。
「eco庭」プロジェクトは、落ち葉を活用して腐葉土を作り、スーツケースを栽培プランターに再利用している。
また、卵の殻ゴミも有機石灰として肥料に再利用しており、モノを使い切る取り組みが行われている。
東京、JR水道橋駅に近い神田三崎町の「庭のホテル」では、屋上でスーツケースからにょきにょき飛びたす野菜が見られます。
これは、ホテルが「eco庭」プロジェクトとして行う野菜の自家栽培です。収穫した野菜は、レストランで提供されています。
しかし、なぜスーツケースなのでしょうか。
じつは、多くの外国人客が日本を訪れるようになった昨今、そうした旅の途中でホテルに捨てられたスーツケースを、プランターとして再利用しているのです。
神田三崎町といえば、古本屋街や大学、出版社が並ぶ文化的な土地柄です。
もともと、この地で1935年に日本旅館として創業した「庭のホテル」では、和文化をテーマにしてさまざまな活動を展開しています。
モノを最後まで使うという習慣は和文化の中心であることから、こうしたスーツケースの再利用もホテルのコンセプトに重なるといいます。
つまり、「eco庭」プロジェクトは、ホテルがいま持っているものを使い切るという実践的な施策なのです。
プロジェクトのきっかけは、2022年秋のコロナ禍のこと、ホテルの庭に貯まる落ち葉がきっかけでした。
4つの庭で集まる落ち葉をただ捨てるのではなく、腐葉土に加工し、それを利用して屋上で野菜を無農薬栽培してみたらと着想したといいます。
しかし、腐葉土を作る過程で問題が起き、結果としてスーツケースを利用するオリジナルの取り組みに繋がっていきました。
その経緯について、庭のホテルの担当者は次のように話します。
「初めは、取引先のコーヒー専門店から、コーヒーの輸入で使用する麻袋を譲り受け、そこに土を入れて野菜の栽培を始めました。しかし保水性と耐久性に難があり、他に良いものがないか探していた時に、ホテルの廃棄物集積所にあるスーツケースに目が留まり、これをプランターとして活用する事を思いつきました」
実際に、ホテルに捨て置かれるスーツケースは月に3~4個もあるといいます。多くは、大きいケースに買い替える、キャスターやファスナーが壊れといった理由のようです。
そのままでは粗大ゴミに出すことになりますが、現在はそのうち約20個を活用しています。
はじめは試行錯誤したスーツケースの解体も、コツを掴んでからは30分ほどでプランターに加工できるといいます。また、スーツケースを使ったプランターの作り方は、動画でも公開されています。
このように、「eco庭」プロジェクトは土の再生とモノの再利用が組み合わされています。
さらに、レストランの朝食で大量に出る卵の殻ゴミも、砕いて有機石灰として肥料にしており、モノを使い切る取り組みは幾重にも繰り返されています。