乱高下する株式市場、ウォール街「最後の弱気派」の予言は的中するか

AI要約

8月5日、東京市場で株価が大幅下落し、米景気後退懸念と円キャリートレード解消が共振現象を引き起こした。

市場は不安定感を抱えながら、日本や米国の金融政策に対する疑念が広がっている。

日銀は政策金利を引き上げることで、円安を促進し、物価上昇を目指している。

 (国際ジャーナリスト・木村正人)

■ 米景気後退懸念と円キャリートレード解消が共振する

 [ロンドン発]8月5日、東京市場で日経平均株価の下げ幅が4451円となり、米株式市場が大暴落した1987年のブラックマンデー翌日を上回り過去最悪となった。米景気後退懸念と円高による急激な円キャリートレード解消が共振現象を起こしたとみられ、これをきっかけに世界中の市場で暴落が起こった。

 日経平均の時価総額は7月11日に765兆1200億円に達したが、8月5日にはそこから200兆円近くが吹き飛んだ計算だ。

 ただ暴落の翌日6日には一転して3217円の暴騰。さらに7日午前には日本銀行の内田真一副総裁が「金融資本市場が不安定な状況で、利上げすることはない」と発言。「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要がある」と述べたことで、さらに株価が急騰する展開に。このように株価の乱高下が続いており、市場にはまだ不安定感が漂っている。

 今年1月、日本では新NISA(少額投資非課税制度)がスタート、投資に乗り出す人々が急増した。そうした中、日銀は緩やかな利上げサイクルを目指し始めていたところだった。内田副総裁の発言で利上げ懸念はいったん収まったが、日銀がまたいつ利上げを志向し始めるかは分からない。9月にも米国の利下げサイクルが始まると見られる中、日本の一般投資家が再び大ケガを負う恐れもある。

 5日の大暴落の凶兆は米大統領選TV討論だった。6月27日、ジョー・バイデン大統領(民主党)がしどろもどろになり保護主義者ドナルド・トランプ前大統領(共和党)に太刀打ちできなかった。さらなる関税引き上げによる米中貿易戦争を見越して“トランプトレード”の暗雲が漂い始めた。

 米連邦準備理事会(FRB)の9月利下げが景気減速でほぼ確実になり、7月9日以降、米大型ハイテク株から小型株へのローテーションが始まった。割高なハイテク株が急落する一方で、割安の株価指数ラッセル2000(小型株)が11.5%もハネ上がり、景気拡大の楽観ムードも。

■ 円弱是正の政治的圧力を受けた日銀は追加利上げ

 円弱是正の政治的圧力を受けた日銀は7月31日「2%の『物価安定の目標』の持続的・安定的な実現という観点から金融緩和の度合いを調整することが適切」と追加利上げを決定。8月1日に政策金利を0~0.1%から0.25%に引き上げた。

 「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」との考えを示した。長期国債の月間買入れ予定額も四半期ごとに4000億円程度ずつ減額し、5.7兆円程度から26年第1四半期に2.9兆円まで縮小する。

 植田和男総裁は「政策金利の変更後も実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持される」「足元の円安が物価に上振れリスクを発生させていることもあって政策変更に至った」と述べた。日米金利差を縮め、円高に転換させるのが追加利上げの狙いだったとみて間違いない。