メルカリは米国市場に見切りをつけるのか? 赤字続きでついに現地で100人レイオフ(小林佳樹)

AI要約

フリマアプリのメルカリが米国法人の現地社員の半数弱を解雇し、米国市場での苦戦が続いている。営業赤字や新興中国系EC企業の競争による取引停滞が課題となっており、規模を縮小して再ブランディングを図る。

メルカリは上場後、海外事業に注力すると公言し、米国市場でのイーベイへの挑戦を目指していたが、存在感を高めることは容易ではない。米国進出から10年近く経っても赤字続きで成果が出ていない状況。

CEOは粘り強く米国進出を続け、戦略を強化するなど努力してきたが、黒字化には至っていない。将来の展望や市場の状況を踏まえ、米国市場への取り組みを見直す時期に差し掛かっている。

メルカリは米国市場に見切りをつけるのか? 赤字続きでついに現地で100人レイオフ(小林佳樹)

【経済ニュースの核心】

 フリマアプリのメルカリ(山田進太郎CEO)が6月に米国法人の現地社員の半数弱に相当する約100人を一時解雇(レイオフ)したことが明らかになった。米国事業はインフレによる取引停滞や中国系の格安電子商取引(EC)の台頭で営業赤字が続いており、いったん、規模を縮小して米国事業を仕切り直す狙いがあるとみられている。

 メルカリの米国市場での苦戦はいまに始まったことではない。メルカリは2018年6月に東証マザーズ市場(当時)に上場。ユニコーン企業の誕生に市場は沸いたが、高まる市場の期待とは裏腹に、「メルカリの将来には大きな課題が立ちはだかる」と、金融関係者は厳しい指摘をしていた。メルカリの成長に欠かせない米国市場での苦戦だ。

 メルカリの山田CEOは上場で得られる資金について、「まず海外事業への投資に振り向ける」と公言していた。狙いは、「日本の10倍といわれる米国フリマ市場で、イーベイに挑戦すること」(ITアナリスト)にあった。しかし、米国市場で新参者のメルカリが存在感を高めることは容易なことではない。

■創業の翌年に米国進出も存在感ゼロ

 メルカリは創業の翌年、14年に早々と米国市場に進出した。だが、「精力的に市場開拓に取り組んだものの、10年経った現在も存在感がほとんど感じられない」(メガバンク幹部)というありさま。赤字続きで、収益の足を引っ張っている。

 17年6月期から23年7~9月期まで米国事業の累積赤字は700億円規模に達する。主因は海外での広宣費の高止まりだ。「メルカリアプリのダウンロード数の約3割は米国が占めるが、稼働率は数%にとどまる」(同)とされる。低迷する米国市場のテコ入れを図るため、17年にフェイスブック元副社長で、NTTドコモでiモードの開発に参画した経験を持つジョン・ラーゲリン氏を招聘し、戦略を強化したが、いまだに黒字化のメドは立っていない。

 山田CEOは、メルカリの米国市場への挑戦について、日本人初の本格的大リーガーとなった野茂英雄選手になぞらえ、「みな最初は懐疑的だったが、野茂投手はスターになった」と語り、粘り強く取り組む姿勢を堅持してきた。果たしてメルカリは米国でもスター企業になれるか……。それとも米国市場を見限って、思い切って撤退するのか。大規模なレイオフは、そろそろ判断を下す時期に来ていることをにおわせる。

(小林佳樹/金融ジャーナリスト)