なぜ日本では、ウーバーのような「共創」ができないのか? 「モビリティー大国」への進化を阻む「3つの壁」

AI要約

日本の自動車産業が大変革の荒波にさらされている中、モビリティーサービスを通じて幸せに暮らせる社会の実現が必要だ。

地方の人口減少や高齢化が進む中、モビリティーデザインを確立し、世界に輸出するチャンスもある。

日本は「自動車大国」から「モビリティー大国」へ進化し、人々の幸福を追求すべきだ。

 もはや明るい未来はない。人口減少下で経済成長はできない、この状況は変えられない…そんな悲観論が蔓延する日本。これから「成長」していくには価値循環こそがカギとなる。本連載では、『価値循環の成長戦略 人口減少下に“個が輝く”日本の未来図』(デロイト トーマツ グループ/日経BP)の一部を抜粋、再編集。日本社会に存在する壁を乗り越えて、「今日より明日が良くなる」と実感できる社会を実現するための具体的な道筋を見ていく。

 第6回は、「モノ」から「コト」への価値観の変化に伴い、「自動車大国」から「モビリティー大国」へ進化するために越えなければいけない「3つの壁」を解説する。

■ モビリティー「自動車大国」から「モビリティー大国」へ

 ● 将来ビジョン

 名実ともに日本の産業をけん引してきた自動車産業であるが、100年に1度ともいわれる「CASE」(コネクテッド化、自動運転化、シェアリングサービス化、電動化)を中心とした大変革の荒波にさらされている。自動車を所有するという概念が崩れ、「モノ」(機能)から「コト」(体験)へ価値観が大きく変化し、モビリティーを利用するという流れが強まっている。

 こうした中で日本が目指すべきは、高齢化や地方の人口減少などの社会課題が深刻化したとしても、モビリティーサービスを通じて幸せに暮らせる社会の実現だ。

 地方における人口減少、高齢化は日本が先陣を切る形で進んでいるが、世界的な課題でもある。世界銀行によれば、世界の地方地域(郊外)の人口は、1960年の66%から都市化の進展により2022年には43%に縮小となっている。高齢化も世界共通の傾向として見受けられる。海外でも人口が減少する地域では日本と同様に公共交通の破綻が相次ぎ、病院や公共機関など個人の生活に必須な機能へのアクセスも困難になることが想定される。

 このような課題を乗り越える日本ならではのモビリティーデザインを確立できれば、そのハードやソフト、運用ノウハウなどをまとめて世界に輸出するチャンスも見えてくるだろう。ものづくりとしての「自動車大国」から、人々の幸福を実現する「モビリティー大国」へ進化を目指すべきだ。