配偶者に資産を遺すために欠かせない“相続の準備” 非課税枠のある生命保険の加入検討、株は現金化、自宅は“おしどり贈与”を活用

AI要約

夫が妻より先に亡くなるケースが多い日本で生活保険を加入し、妻に遺産を残す準備をする必要がある。

遺産を残すためには株や有価証券を現金化し、保険金も考慮する必要がある。

妻への救済制度を知り、遺族年金や遺族基礎年金などの利用を検討することが重要だ。

配偶者に資産を遺すために欠かせない“相続の準備” 非課税枠のある生命保険の加入検討、株は現金化、自宅は“おしどり贈与”を活用

 日本人の平均寿命を考えると、夫が妻よりも先に逝くケースが多い。自分が先に死んだ後、遺された妻には経済面の心配なく生きてほしいものだ。

 生涯をかけて築いた財産を抜かりなく妻に渡すためには、相続を見越した生前準備が欠かせない。税理士の根本淳一氏が語る。

「まとまったお金を妻に遺すためにも、生命保険の未加入者は今からでも加入を検討すべきです。定期保険ではなく死亡保障が生涯続く終身保険が望ましい。

 死亡保険金は『みなし相続財産』として課税対象になりますが、相続税の基礎控除とは別に『500万円×法定相続人』の非課税枠があることもメリットです」

 株や有価証券がある場合も準備が必要だ。いずれも生前に現金化しておくと良いという。

「株も相続の対象ですが、妻の名義に変更するための必要書類や口座開設など、手続きが非常に面倒なので預貯金化しておく方法があります。ただし、売却益が大きいと税負担も増えるので注意。

 未上場株を保有している場合はその所在を忘れがちなので、妻に証券情報を伝えておくことが大切です」

 遺された妻への救済制度を確認しておくことも欠かせない。その筆頭が「遺族年金」だ。

 厚生年金の加入期間が25年以上ある夫が亡くなった場合、妻は「遺族厚生年金」を受け取れる。受給額は、夫の厚生年金受給額の4分の3となる。

 例えば夫の年金が約198万円(基礎年金約78万円+厚生年金約120万円)の場合、妻は自分の老齢基礎年金(約78万円)に加え、夫の厚生年金の4分の3(約90万円)が遺族厚生年金として上乗せされ、合計で約168万円を死ぬまで受給できる。

 ただし注意点もある。社会保険労務士の蒲島竜也氏が語る。

「遺族厚生年金の請求には時効があり、死亡した日から5年以内に請求する必要があります。また、妻の年収が850万円以上あると、遺族厚生年金を受給できない可能性があります」

 自営業者などで国民年金に加入していた夫が亡くなった場合は、「遺族基礎年金」がある。蒲島氏が語る。

「こちらは18歳未満の子がいることが条件です。支給額は『78万円+子の加算』で、子が2人までは各約22万5000円が、3人目以降は各7万5000円が加算されます」

 子のいない夫婦でも、夫が年金受給前なら最高32万円の「死亡一時金」や、妻が60~64歳の間に年間約58万円の「寡婦年金」がもらえる可能性がある。

「ともに制度を知らない人が多いので要注意です。死亡一時金は夫の死後2年以内、寡婦年金は死後5年以内に年金事務所で手続きしないともらえません」(蒲島氏)

 配偶者への救済制度は漏れなくすべて活用することが重要だ。